モノトーンの衣装で登場したこの日のふたり。作曲、ヴァイオリンの波多野敦子さんがかぶった黒いベレー帽のてっぺんについているグレーの毛糸ポンポンが演奏するごとに揺れてかわいい。ヴィオラの手島絵里子さんはめずらしくヒールではなく、フラットソールのブーツで。
triola名義としては初めてのアルバムが5月にワンダーグラウンドからリリースされるということで、いままで仮題だった楽曲の正式タイトルが決まり、演奏そのものも収まるべきところにしっくり収まってきた印象です。その一方で、この日はじめて披露されたふたつの新曲のうち、「新曲2」とだけ紹介されたインストゥルメンタル・ナンバーの逸脱ぶりがすごかった。
ワルツで始まった曲に、複数の奇数拍子が転調しながら重なり合って、リフレインのうちに拍節感と調性が薄まり、完全に喪失する混沌の手前ぎりぎりのタイミングで、不意に東欧風の甘く官能的な旋律が浮かび上がるという、作曲家波多野敦子の新機軸であり、真骨頂ともいえる新作。タイミング的に5月のアルバムには収録されないと思いますが、更にその先が見えているのだな、と楽しみです。
長い風邪から回復したばかりで若干かすれ声の波多野さんでしたが、3曲演奏されたヴォーカル・ナンバーでは、その風邪声を逆手に取ったソフトなウィスパーボイスでメロウな一面を聴かせつつ、インスト・ナンバーは逆に攻めの姿勢を前面に出してエッジの効いたハードな選曲。こういったシニカルなユーモアは、優秀なライブパフォーマーに欠かせない要素だと思います。
手島さんの新しいヴィオラも良く響いて全12曲。晩冬のleteの箱鳴りも全部ひっくるめてtriolaの音楽をかたどった幸福な2時間でした。
0 件のコメント:
コメントを投稿