『とまり木にて』はノラオンナさんが不定期に企画するツーマンライブで、セットリストを決めずに1曲ずつ交互に演奏するという趣向ですが、今回はそのレギュレーションではなく、ノラオンナさんのデビュー20周年を17組のミュージシャンがノラさんの作品を1人1曲カバーして祝うというものです。
4月に開催された全曲演奏ライブ『ノラオンナ58ミーティング デビュー20周年「風の街へ流れ星を見に行こう」』のボーナスディスク的な位置づけと言っていいと思います。
客電が落ちると真っ暗なステージでバリトンウクレレを爪弾いて歌い始めるノラさん。曲は今年12月24日にリリースを控える新譜『スサー』から「拳」です。次に舞台上手に置かれたピアノにスポットが当たり、デビュー盤の1曲目「流れ星」を藤原マヒトさんが歌う。
以降は出演順に、えとらんぜ(尾張文重/小林治郎)、さみぃ、マユルカとカナコ、矢舟テツロー、寺田貴彦(ブックエンズ)、中川五郎、小西康陽。休憩を挟んで、永井サク、水ゐ涼と宮坂洋生、ayumi melody、おきょん、古川麦、ほりおみわ、外園健彦、曽我部恵一(以上敬称略)、という豪華出演陣がノラさんの楽曲をラブ&リスペクトをもって歌い、演奏する。クララズさんの病欠が惜しまれます。
ノラさんはずっとステージ後方の椅子にいて、曲間に各演奏者との関係性や楽曲の制作に関するエピソードを話す。「夜のヒットスタジオ」の芳村真理のポジション、もしくは『俊読』における故谷川俊太郎氏の位置付けか。若手から大御所まで、一曲入魂の御前試合をやり切って、清々しい表情でステージを降りる出演者たち。そこに勝ち負けはない。
みなさん素晴らしかったのですが、個人的に印象に残ったアクトをいくつか。マユルカとカナコさんの「僕のお願い」のイントロのうみねこを模したようなヴァイオリンとアウトロの清涼な二声のフーガ。ayumi melodyさんの「フルーツサンドウィッチ」の温かくて、このうえなく丁寧な再解釈。「こくはく」をスチールパン弾き語りで聴かせたおきょんさんの耳に心地良い歌声と背筋の伸びた佇まい。曽我部恵一さんの「やさしさの出口で」の恐ろしいほどにフレッシュなシズル感。
誰よりもノラさんが楽しんでいるのが伝わって、会場全体に幸福感が満ちていました。20周年おめでとうございます。たくさんの素晴らしい楽曲を生み出してくださってありがとうございます。
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