茜(安藤サクラ)と結婚して坂間酒造を継いだまーちん(岡田将生)は2女の父になった。山路(松坂桃李)は変わらず童貞の小学校教師。2人とも6年前と同様にレンタルおっさん麻生(吉田鋼太郎)に愚痴を聞いてもらっている。麻生の息子まりぶ(柳楽優弥)は起業に失敗しガールズバーの客引きに戻った。
2016年4~6月期のTVドラマ放送から7年が経ち、主人公3人のダメなところは変わらないが、世間はアップデートしている。かつてゆとりモンスターと恐れられた山岸(仲野太賀)はZ世代の後輩たちにリモートで吊し上げられている。
宮藤官九郎脚本のドラマが「インターナショナル」の副題を付けて映画化。劇場版となれば予算が増えて海外ロケかと思いきや、舞台は相変わらず八王子と阿佐ヶ谷と高円寺。だが、坂間酒造が純米酒ゆとりの民を卸している焼鳥店は韓国資本に買収されてサムギョプサルの店になり、山路のクラスに入った転校生はアメリカ人のアンソニーとタイ人トンチャイ。まりぶは上海で海老チリ専門店を潰すが現地の動画サイトで人気コンテンツを発信している。ついでに、まーちんの妹ゆとり(島崎遥香)は北欧雑貨のコマースサイトを起こし、山路の元同僚佐倉悦子(吉岡里帆)はコロナ禍で帰国できない外国人滞留者向けのシェアハウスを運営している。
伝統産業の衰退、世代間ギャップ、円安、インバウンド、リモート会議、LGBTQ、#MeToo、など現在我々が直面している社会課題を織り込みつつ随所で笑える良く練られた脚本、テンポの良い編集、俳優陣の演技。ウェルメイドなコメディを観た後の爽快感が残る。2001年の『GO』に始まり『ピンポン』『木更津キャッツアイ』『アイデン&ティティ』『69 sixty nine』『舞妓Haaaan!!!』『少年メリケンサック』『鈍獣』『なくもんか』『中学生円山』など、クドカン脚本の映画をそれなりに観てきましたが、本作はかなり上出来だと思います。
時間を遡って答え合わせする演出はクドカン作品の得意とするところですが、本作のエンドロールはそれを更に一歩進めて、仏壇に語り掛ける滑稽な家族像を感動的に描いている。
岡田将生、松坂桃李(左利き)、柳楽優弥の主役3人は、いまや日本映画を代表する同世代の名優といっても過言ではないですが、安藤サクラのえげつないまでの演技力は別格。劇場版で追加された登場人物では、焼鳥屋を買収した韓国企業から出向してきた課長チェ・シネ役の木南晴夏が強烈です。ハングル語、英語、片言日本語を自在に操り男たちを罵倒する終始不機嫌なキャラはこの先ずっと語り継がれるでしょう。
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