「死にたい。死んでしまいたい。絶望の淵を僕は歩いている」。オーバーサイズのネルシャツを着た背中をカメラが追う。男は廃墟と化したホテルに入っていく。テーブルに着くとメイドのハル(莉子)が自己紹介し、カップ焼きそばを運んでくる。男はそれを無言で食べると、母からの手紙が皿の上で燃やされ、画面は暗転する。
「生きてる意味あるの?」と〈僕〉(北村匠海)を責める上司コダマ(忍成修吾)。続きは喫煙室で、と言うコダマに「煙草吸わないんで」と答え、屋上で煙草に火を点けようとする〈僕〉を咎める〈私〉(古川琴音)は〈僕〉から煙草を奪って吸い始める。
テレビ局員のユウスケ(中川大志)は数日前に着信を無視した大学の同級生森(三河悠冴)の自殺の報を受け動揺して泥酔し、バーで同席した初対面の菜穂(松岡茉優)に結婚を申し込む。森の自死を〈僕〉に伝えると、自殺願望のある〈僕〉もまた激しく動揺する。
橋爪駿輝のデビュー連作短編小説を映画化した本作は、子役時代から演技を磨いた若手俳優陣をメインキャストに据えた青春偶像劇。主要登場人物たちの保守性とナルシスティックでどんよりした青さがいたたまれなく、残念ながら僕は楽しむことができませんでした。
映画に登場するWRITEというテキストベースのSNSはUIの類似性からnoteのことだと思いますが、〈僕〉の投稿が冒頭の「死にたい~」や「コダマまじ死んでほしい」みたいにちょっとアレな感じで、そこに共鳴して自身の絵画作品に昇華しようとする〈私〉に共感できない。「社会が何もしてくれなかったんじゃない。僕が社会に何もしてこなかったんだ」という〈僕〉の終盤のモノローグも自己責任論に囚われて言わされている感が拭えない。
MEGUMIさん演じるバーのオーナーの人物造形の良さと終始チャラいユウスケがジャーナリストとして現実に向き合い始める兆しが見られるのが救いか。松岡茉優は重たい女を終始不穏に演じ、役者として本当に有能だと思いました。
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