1988年イタリア。トスカーナ州タルチーノ村のカステル・ヌオーヴォ・デッラ・バーテ修道院の礼拝室で、白い僧衣を着た5人のフランス人修道士が、ラテン語の聖歌を歌い、朝の祈りを捧げる。
一方で描かれる村人たちの日常。牛に鍬を引かせて畑を耕し、オリーブの実の収穫、ワイン作り、豚の解体、猪を狩り、夜は自室でテレビを観て、あるいは酒場で歌をうたう。
修道士たちの規則正しい祈りの生活と村人たちのおおらかな日常を記録した57分のドキュメンタリーフィルム。しかし聖と俗を対比させるわけではなく、時には修道士たちも山を下り村人たちとワインを酌み交わし、クリスマスには共にかがり火を囲む。ヒッチハイクもすれば、食事中にむせてしまうこともある。
もう一本は1982年のパリを舞台にしたタイトルの通り21分のスケッチ的小品。①鉄道と駅前のベンチで歌うホームレス、②ディスコ音楽でうるさい部屋を出る老紳士、③着飾って美容院で髪を整えデートに向かう美女、④犬の散歩と毛皮の女たち、⑤拳銃で撃ち合うビジネスマン、⑥カフェで食べたり飲んだりする多数の男女、⑦歌う酔っ払い。
『トスカーナの小さな修道院』の冒頭の聖アルフォンソ・デ・リゴリの「この世における価値は死の床を基準にせよ」という箴言と「第一部はこれで終了。すべて順調にいけば20年後に同じ場所、同じ人々で続編が撮影される」というエンドロール以外、2本を通じて字幕がありませんでしたが、そのことで逆に僕も同じ場所、同じ時間を過ごしているような感覚になりました。
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