2021年12月7日火曜日

ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド


1987年9月12日に英国メロディメイカー紙に掲載されたザ・スミス解散。米国コロラド州デンバーでスーパーマーケットに勤務するクレオ(ヘレナ・ハワード)はアルコール依存症の母親がソファで眠りこけるリビングでつけっぱなしのテレビからその一報に触れ家を飛び出す。

マドンナワナビーのシーラ(エレナ・カンプーリス)のボーイフレンドのパトリック(ジェームズ・ブルーア)はメイク男子。モリッシーに心酔し肉食とセックスを絶っていてシーラは欲求不満。クレオに恋するビリー(ニック・クラウス)は翌日に入隊を控えているがオナニーばかりしている。

錆だらけのフォルクスワーゲンでクレオが向かった先は地元のレコードショップ。店員ディーン(エラー・コルトレーン)もスミスファン。愛するバンドが解散したのに町は普段通り、と憤懣をぶつけるクレオ。ディーンもまたひそかにクレオに想いを寄せていた。

高校を卒業したばかりの4人、クレオ、シーラ、パトリック、ビリーが自棄になってパーティをハシゴしているとき、ディーンはスミスのLP、12inchと拳銃を持ってローカルFM局に押し入り、アリス・クーパーのTシャツを着たHR/HM系中年DJフルメタル・ミッキー(ジョー・マンガニエロ)にオジー・オズボーンを止めさせ「スミスの曲をかけ続けろ」と脅迫する。


80年代UKロックファンのあいだでは伝説的な実話に基づいたストーリーをスミスの名曲を章題に4幕の青春群像劇にしています。アメリカの郊外の労働者階級の閉塞感がけっして明朗とはいえないが精緻で美しいスミスの楽曲群に彩られ、登場人物の心情に音楽がシンクロし、台詞にも歌詞が引用されて、ファンにはたまらない一本になっていると思います。

はじめはスミスを毛嫌いしていたが何時間も聴かされるうちにすこしだけその魅力に気づき、徐々に心を開いて息子のような歳のディーンに自身の半生を訥々と語りかけるフルメタル・ミッキーの優しさが沁み、自分もそっち側に来たんだなと感慨深いです。

リアルタイム世代なので、東京のクラブにもマッチョな黒人のドアマンがいたなとか、ブロンスキ・ビートとか、まあ懐かしくはあります。UKインディー系バンドでは、ザ・スミス、ザ・キュアエコー&ザ・バニーメンが人気を三分しており、僕はエコバニ派でした。

モリッシーの独特な声と歌詞、ジョニー・マーの多彩で煌びやかなギターはもちろんですが、映画館の大音響で聴くとマイク・ジョイスのドラムスとアンディ・ルークのベースがタイトでヘヴィでグルーヴィで素晴らしく、演奏力の面でもザ・スミスが希有なバンドだったことがわかる。モリッシー&マーのインタビュー映像も流れ「スミスのメンバー以外に友だちはいない」というモリッシーの言葉が泣けます。


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