土曜日の午後、開場直前の雨に降られた人たちが賑やかに石段を駆け下りて来る。小夜さんと石渡紀美さん、弱小で、とにかく遅い二人の、小さな朗読会(自己申告ベース)『ピアニシモ、ラルゴ』が白山の老舗JAZZ喫茶映画館で開催されました。
スタートは「ノイエ・ムジーク~パラドクシカル」。紀美さんの詩をふたりで朗読します。ユニゾンとも輪読とも違う。ひとりが主旋律を読み、キーフレーズにもうひとりがコーラスやカウンターメロディを控えめに添える。
小夜さんのすこし鼻にかかった甘い声、紀美さんのゆったりとたゆたうような抑揚。はじかず溶け合わずな対比が奥行きと陰影を作る。あえてマイクで増幅しないことでナチュラルで心地良い遠近感が生まれる。
次にじゃんけんで負けた紀美さんからソロで9篇を朗読。「まだ誰の鼓膜もふるわせない声が/誰かののどをいためている」(声)。このソネットをはじめ、現在制作中の新詩集に収められる小品を中心に。
小夜さんのソロパートは過去作から最近の作品まで網羅した長編詩をレトロスペクティブ的な構成で。
短いインターバルを挟んで、紀美さんの「みんなのうた」、小夜さんの「各駅停車」、同じ詩を異なる声で2度ずつ朗読する後半。このパートは殊に朗読を聴く愉しみが凝縮されていると感じました。最後はふたりの共作と連詩を3篇。
いろいろな聴き方があっていいと思うのですが、僕の場合は言葉の意味やストーリーやメッセージよりなにより、声として、音として、朗読を聴いているのだなあ、と気づきました。音階や拍節という音楽的な形式から解放された純粋な声を聴きたくて朗読会に足を運ぶ。
今回フライヤーデザインやモギリをさせてもらって、御予約のお客様ひとりひとりのお名前を確認したりしたのも楽しかったです。
0 件のコメント:
コメントを投稿