有楽町の東京国際フォーラムを中心とした丸の内エリアで毎年この時期に開催されていたクラシック音楽フェス『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン』が、今年から『ラ・フォル・ジュルネ TOKYO』と名を改め、開催エリアを池袋にも広げました。
今年のフェス全体のテーマは「モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ」。様々な理由で母国を離れた作曲家の作品によるプログラム構成。各ホールには亡命した文学者の名前が付けられています。
3日間で有料公演を9つ、初日の5/3憲法記念日は3公演を鑑賞しました。
■公演番号:T134
東京芸術劇場シアターウエスト(ツェラン) 16:30~17:15
マリー=アンジュ・グッチ(ピアノ)
ショパン:序奏とロンド 変ホ長調 op.16
ラフマニノフ:練習曲集「音の絵」op.39から 第4、5番
プロコフィエフ:ピアノソナタ第6番 イ長調 op.82
欧州クラシック音楽界で最注目の二十歳は前評判以上でした。フィジカルの強靭さと精妙な技巧と陰翳の深い抒情性を兼ね備えている。ショパンの包み込むような優しい響き、ラフマニノフのドラマチックな表現力、プロコフィエフの構築性。まったく集中が途切れることなく、しかもひとつひとつの音色が澄んでいる。アンコールで弾いたラヴェルの「左手のためのコンチェルト」カデンツァも鮮烈でした。
■公演番号:M156『パリのモーツァルト』
東京京国際フォーラム ホールD7(ネルーダ) 19:10~19:55
梁美沙(ヴァイオリン)
ジョナス・ヴィトー(ピアノ)
モーツァルト:「ああ、ママに言うわ」による変奏曲(キラキラ星変奏曲)K.265
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第21番 ホ短調 K.304
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第23番 ニ長調 K.306
LFJ2015で初めて聴いて虜になり、昨年もフォローしたパリで活動するヴァイオリンの梁美沙さんが今年も来日してくれました。18世紀のヴァイオリンソナタは鍵盤から弦に主役が移り変わる端境期。繊細な色彩を一筆ずつそっと置くような彼女のヴァイオリンに似合います。演奏中は独特の伸びあがるように優美な動きで大きく見えますが、巨漢のヴィトー氏と並ぶとびっくりするほど小柄で華奢です。
■公演番号:M167
東京国際フォーラム ホールG409(デスノス) 20:30~21:15
オリヴィエ・シャルリエ(ヴァイオリン)
フローラン・ボファール(ピアノ)
マルティヌー:チェコ狂詩曲
ストラヴィンスキー:「妖精の口づけ」から ディヴェルティメント
シェーンベルク:幻想曲 op.47
クライスラー:ウィーン風狂想的幻想曲
梁美沙さんの師匠筋にあたるシャルリエ氏はサッカー元ポルトガル代表ルイス・フィーゴ似のハードボイルドタッチ。ピアノのボファール氏はMr.ビーンを2倍縦長にした感じ。手練ふたりがしちめんどくさい現代曲を笑顔で弾き倒す。マルティヌーのピアノの硬質な空洞感。クライスラーの重音を多用した懐古的な旋律。20世紀は既にノスタルジーの中にあるんだなあ、と思いました。
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