森川ココネ(声:高畑充希)は高校3年生。倉敷市児島、瀬戸大橋の見える高台で小さな自動車修理工場を営む無愛想な父親モモタロー(声:江口洋介)と二人で暮らしている。舞台は2020年の夏、東京五輪の直前。家でも教室でも居眠りばかりしているココネには決まって見る夢があった。
映画の冒頭10分は主人公の見る夢で「お、寅さん」と思う。ハートランドはすべての人が機械作りに携わっている国。その国に災いをもたらすという魔法の力を持つ王女エンシェンの冒険譚はロボットSFファンタジー。そして瀬戸内ののどかな島の女子高生の日常のパラレルワールド。父親の逮捕を機に、夢と現実の世界が交錯しはじめる。
キャラクター造形と動きの滑らかさが見事で、背景描写も美しく、アクションにもキレがある。夢と現実の世界がそれぞれ魅力的に描かれているところは高く評価できます。一方でふたつの物語が溶け合ってドライヴがかかる後半は、変化し続ける設定の複雑さを観客に伝えるには脚本の力が充分ではないように感じました。
高畑充希さんの抑えた演技。岡山弁のお芝居も達者ですが、達者すぎてときどき女子高生の台詞には聞こえないのが難点かも。エンドロールでご自身の歌う「デイドリーム・ビリーバー」は舞台ミュージカル出身の面目躍如。とても上手だし素敵です。もっと歌えばいいのに。
はじめて会った祖父に「人生は短い」と言われ、「人生って短いんだ」とおどろくココネ。ありそうでなかった会話で、この映画の一番の名場面だと思います。僕も18歳の頃、人生が有限なことは理性では認識していましたが、体感はしていませんでした。
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