2016年12月18日日曜日

Smoke デジタルリマスター版

クリスマス前の日曜の人混みを抜けて。恵比寿ガーデンンシネマで、ウェイン・ワン監督作品『Smoke デジタルリマスター版』を観ました。

1990年夏のNYブルックリン。煙草屋の雇われ店主オーギー(ハーヴェイ・カイテル)は12年間毎朝8時にCANON AE-1で3丁目と7番街の角の写真を撮り続けている。常連客の作家ポール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート)は妻を事故で亡くしてから小説が書けなくなってしまった。

ポール・オースターの短編小説「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」をベースにオースター自身が脚本を書き、製作したこの映画を、日本公開時の1995年に、開業したばかりの恵比寿ガーデンシネマで観ています。21年の時を経て、同じ映画館で同じ映画を観るということに。その間に、9.11があり、イラク戦争が起き、大統領はブッシュからオバマに。スクリーンに映るマンハッタンにはワールドトレードセンターのツインタワーが聳えている。

「誰か一人でも信じる人間がいるかぎり、本当でない物語などありはしないのだ」。登場人物がみな多少の差こそあれ何らかの欠落を抱えており、都合の良い嘘もつけば、他人のものを盗みもする。感情に流されて判断を誤ることもある。それでも、ポール、オーギー、サイラス・コール(フォレスト・ウィテカー)がそれぞれの声で語る寓意に満ちた物語はいずれも大変に魅力的で、そのコミットメントの強さは語られる物語が真実であるか否かを超える。それこそがポール・オースターの作品の強さなのだと思います。

トム・ウェイツの1970年代の名曲「トム・トラバートのブルーズ」が全然クリスマスの歌じゃないのにクリスマスっぽい感じがするのって『スモーク』のせいだよね。とずっと思っていて、もしかしたら誰かにそんな話をしたかもしれませんが、完全な記憶違いでした。本編の最後にモノクロ画面で綴られる「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」に流れるのは "Innocent When You Dream"。画面の盲目の老婆(クラリス・テイラー)の寝顔とシンクロしている。

もうひとつ忘れていたのが、黒髪ショートボブの書店員エイプリル・リーを演じたメアリー・B・ワードのとてつもない可憐さ。いろいろ調べてみたのですが、残念ながらその後の出演作が見つかりません。彼女が登場するダンスフロアのシーンでは同じくトム・ウェイツの1980年代の名曲「ダウンタウン・トレイン」がかかります。

 

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