早起きした日曜日、舞浜シネマイクスピアリでロバート・パドロー監督作品『ブルーに生まれついて』を観ました。
スタン・ゲッツ、ジェリー・マリガン、アート・ペッパーらと並び米西海岸ジャズを代表するミュージシャン、チェット・ベイカー。エラが張っている、へインズの白Tシャツを着ている、声が小さくボソボソ喋る、などの共通点からジャズ界のジェームス・ディーンとも呼ばれた。
トランペット吹き語りという特異なスタイルで1950年代に絶大な人気を誇ったが、ヘロイン依存で身を持ち崩し、1988年にアムステルダムのホテルの窓から転落死した。享年59歳。彼の1966年(当時37歳)をイーサン・ホークが熱演しています。
1954年NYバードランドで対バンしたマイルス・デイヴィス(ケダー・ブラウン)に「甘くて綺麗なキャンディみたいな音楽だ。金や女のためにジャズをやるやつは信用しない。ビーチに帰れ」と酷評されたことがトラウマに。プッシャーへの支払いが滞った報復に前歯をへし折られ管楽器奏者には致命傷と思われたが、駆け出し女優の恋人ジェイン(カルメン・イジョゴ)だけは再起を信じていた。
「ジャズは死に、ディランがエレキに持ち替えた」1966年。故郷に帰りガソリンスタンドでバイトしたり、ピザ屋のオープンマイクでアマチュアミュージシャンに「もっと練習して来てくれ」と言われたり、変なソンブレロを着せられてマリアッチをレコーディングしたり。「吹けないのと下手なのとどっちが残酷だ」と。
断崖の上のトレーラーハウスで暮し、なんとか音楽を取り戻そうと必死に練習する。トランペットはKevin Turcotteの演奏への当て振りですが、歌はイーサン・ホーク自身の声。無邪気で不安定で傲慢で承認欲求が強い芸術家像に深く没入して演じています。
逆光を活かした自然描写、1954年の回想シーンのモノクロ処理、1966年の演奏シーンのダイナミックなカット割り。映像がスタイリッシュで美しい。
1954年の名盤 "Chet Baker Sings" はすべてのアドリブを口笛でなぞれるほど繰り返し聴きましたが、名曲名演といわれる "My Funny Valentine" だけはどうしても好きになれずに飛ばしてしまいます。
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