日本中を暴風雨が通り過ぎた翌朝、東京は快晴。先々週地下化された下北沢駅北口を出てLatte&Art BALLOND'ESSAIへ。カフェのスタッフに案内されたアパートメントギャラリーで小西博子さんの個展を鑑賞しました。
小西さんの作品はアクリルの色彩を活かした抽象絵画です。キャンバスに太い筆で引かれた絵具から描き手のスピーディなアクションが直接伝わってきます。壁に沿って順番に作品を眺めているうちに"Sublime"という形容詞が浮かんできました。
かといって気難しいものではなく、とてもエモーショナルで、観る人たちの記憶の底を浚うような優しさや温かさがあります。26歳の小西さんにとっては、これがはじめての個展ということでしたが、実に堂々たる存在感のある作品群でした。
なかでも「他人」と題された作品(画像参照)が最も印象に残りました。他の作品が水平あるいは楕円のフォルムを持つなかで、この作品だけが垂直に描かれています。会場にいらした古くからのお友達との会話から、作者の「人はそれぞれ違う色を持って独立している。でも何か、たとえば水を加えれば溶け合い、交じり合う」というコンセプトを知りました。
僕にはこの絵が新しい宗教画に見えます。中央やや左に位置する黄色い像が光輪を戴いたイエス、三人右のブルーがフードをかぶった聖母マリア。周りにいる使徒たちや群衆のなかで孤立しているイエスを直視できず、悲しげに背を向け俯いて祈っている。そして1世紀エルサレムの群衆は、色とりどりの服を着て渋谷駅前スクランブル交差点を渡る2013年の我々に重なる。
抽象絵画ですから解釈はそれぞれですが、「この絵を観て勇気をもらったと言うもいれば、悲しいと言う人もいる」と作者ご本人は語っていました。
これからライブペインティングも多く手がけていきたいという、若き才能の今後がとても楽しみです。
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