年度末ですね。なにかと気忙しく、街がいらついているように感じます。みなさん大丈夫ですか? ユナイテッドシネマ豊洲で、ウォシャウスキー姉弟(お兄さん性転換したんですね)&トム・ティクバ脚本監督作品『クラウドアトラス』を鑑賞しました。賛否を呼んでいる問題作ですが、僕はこの映画好きです。
1849年南北戦争時代のアフリカ奴隷売買と搬送、1936年英国のゲイカップル(片方は別れたのちに「クラウドアトラス六重奏曲」を作曲)、1973年ヒッピームーブメントのサンフランシスコで原発開発を追う女性ジャーナリスト、2012年ロンドン出版セレブのビザールなパーティライフから一転して老人介護施設からのドタバタ逃走劇、2144年ネオソウルのクローン人間カフェ、文明崩壊の106年後2321年の原始化した離島。という6つの場面がスピード感溢れるカット割りで並行して進む。各話の中にひとりずつ出てくる彗星形の痣を持つ者が主人公。主要な役者たちがみな4~6役をこなします。
「我々は人生で何度も同じ道を通る」というカベンディッシュ(ジム・ブロードベント)の台詞(このあと「昔は電車内で詩をつくる若者だった、愛する人のために」と続く、笑)と「命はひとつではない。子宮から墓まで人は他人とつながる。すべての悪が、あらゆる善意が、未来をつくる」というソンミ-451(ペ・ドゥナ)の後世に神格化されるスピーチが物語全体を象徴しています。
それぞれの物語の登場人物のひとりが別の物語に間接的に関わり、全体として大きなストーリーを構成しています。この関わり方が均等ではなく、フィルムの時系列もカットアップされて絡み合っているので判りづらい、メッセージも凡庸、というのが否定的意見。
でも、ひとつひとつのストーリーの中では時系列が逆転することはないので、そんなに苦労して筋を辿るようなこともなく。どこまでもクリアでスタイリッシュな映像美は両監督の真骨頂。
6つの物語のなかで一番魅力を感じたのは2144年ネオソウルです。無機質な新建築と猥雑な旧市街の対比、レトロフューチャーな兵器を用いたスリリングなアクションシーン、そしてなによりペ・ドゥナ。クローン人間が意志を獲得し、革命に殉じることで神格化されていく。彼女が画面に映るすべてのシーンがチャーミングです。最後の方の英国人役のヴィクトリア調コスプレも素敵でした。ハリウッド進出第一作としては大成功と言えるのではないでしょうか。主役のトム・ハンクスとハル・ベリーを完全に食っています。あと、小狡い編集者カベンディッシュが登場するシーンはいちいち笑える。
レイ・ブラッドベリの「華氏451度」、『ソイレント・グリーン』やボブ・ディランの"Like a Rolling Stone"など、時代時代のカウンターカルチャーからの引用も楽しく、3時間近い大作ですがまったく退屈しませんでした。
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