東京湾岸の木蓮が咲き始めました。日暮里のbar PORTOへまえかわとも子さん(左利き)の歌を聴きに。Poemusica Vol.4で共演して以来、『冬の街』はヘビロテ・ディスクとなり、ライブにも何度かお邪魔しましたが、前原孝紀さんとのデュオだったり、The Xangosだったりで、ソロの弾き語りを生で聴くのははじめて。
しかも今回は「たきびバンド」のパーカッショニストrieさんもご出演ということで、いやがおうにも期待が膨らみますが、それを上回る見事な演奏で、いつまでも聴いていたくなるような濃密で贅沢な2時間のステージでした。
以前同じ店で聴いたときはポルトガル語のMPB(ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ)中心の選曲でしたが、「夜には冷たい雨が」「冬の街」、新曲「春だね」と日本語の曲が続きます。まえかわさんの歌声の素晴らしさは、このブログでは何度も紹介してきましたが、自身で作詞作曲している日本語の歌詞も、厳選された最小限の単語で透明感のある情景を描写した、とてもしっかりしたものです。
そしてギター。ちょうど一年前に下北沢のWorkshop Lounge SEED SHIPで聴いたときは、派手さはないけれども、ピッキングが安定していて丁寧でいい演奏をするなあ、と思いましたが、実はそのときはギターを弾き始めてまだわずか1年。それまではボーカル一本だったのを、東日本大震災を機に、ひとりでも歌を届けられるようにと考えギターを覚えたとのこと。それからさらに1年経って、ギタリストとしても大きく成長した姿を見せてくれました。
右手の正確さは更に増し、左手の特にベースラインの響きが豊かで、レガートで鳴らされるときには、ドローン(通奏低音)的な効果が出て、ガットギター1本とシンプルなパーカッションだけなのに、まるで音響派のような深く陰影のある空間を構成します。オーガニックな完全人力アンビエント。その上に、レンジの広い声で、時にふわりと、時に力強く乗せられる情感溢れる歌唱は、歌というより虫の鳴き声や鳥のはばたきのよう。ボサノバ・ベースでありながら2013年の現在を映した音楽が天然の空気を纏って奏でられます。
後半は石垣出身の25歳、カナミネケイタロウさんのベースが加わり、カエターノ・ヴェローソの"Lua Lua Lua"、谷川俊太郎/賢作の「さようなら」などのカバー曲も美しく。宮澤賢治作詞作曲「星めぐりの歌」(←リンクは細野晴臣・裕木奈江バージョンです)を一年ぶりに聴けたのもうれしかったです。
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