「この都会の暗い地面には、自分の光を失った星たちがたくさん散らばっている」。
築地あたりで居酒屋を開いていた夫婦(松たか子、阿部サダヲ)は、火事で店を失ってしまう。再建の資金稼ぎのために始めたのは、妻が計画し、夫が実行する結婚詐欺。心に闇を抱えた女たちを次々に騙していくが、ふたりの心も次第に蝕まれていく。
松たか子の現時点における代表作といえば、湊かなえ原作の『告白』だと思いますが、この『夢売るふたり』も将来キャリアを振り返ったときに必ず挙げられる一本になるはずです。楽天的で前向きな妻が、自ら計画した詐欺によって他の女と関係する夫に対して嫉妬心を持つ。その割り切れない感情を、最小限の台詞と抑えた表情で上手にかつ自然に表現しています。
序盤の田中麗奈から一連の詐欺は、ジョージ・ロイ・ヒル監督の『スティング』なんかにも通じる痛快さ。それが、デリヘル嬢(安藤玉枝)、ウェイトリフティング日本代表候補(江原由夏)あたりから、徐々に騙す相手に感情移入して、気持ちが揺れる阿部サダヲ。このあたりデートで観たら気まずいかも。そしてシングルマザーのハローワーク窓口職員(木村多江)の登場により一気にカタストロフィになだれ込む。
騙すといっても、どこまでが演技で、どこから本気なのか、おそらく騙している当人にも、操っている妻にも、はっきりと線引きできない部分があり、それがリアルで面白い反面、ちょっと息苦しい。なので、ハッピーエンドとはいえないまでも、さっぱりと気持ちの良いエンディングに救われました。
ときどき終電を逃してタクシーで帰宅するときにも感じますが、佃島の夜景は映画のなかでも本当にきれいです。
ときどき終電を逃してタクシーで帰宅するときにも感じますが、佃島の夜景は映画のなかでも本当にきれいです。
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