このブログでは何度も紹介している作編曲、ヴァイオリンの波多野敦子さんとヴィオラの手島絵里子さんによる最小単位弦楽アンサンブルtriola。彼女たちが、triola名義としては最初のアルバム"Unstring,string"を5月にリリース。『トリオラのリリパ』が原宿VACANTで開催されました。
アットホームな雰囲気のパーティ。個性的な食材を複数の出汁で料理する波多野さんの手際に、画家の足田メロウさんやダンサーの木村英一さんといっしょに、波多野さんのご自宅の鍋に招かれたときのことを思い出しました。
そんなパーティムードを反映してか、今日のtriolaはノイズを封印。新譜に収録されている楽曲を中心に、ひたすら美しく優雅に演奏します。インスト曲はふたりで、ボーカル曲はトオヤマタケオさんのフェンダー・ローズ(電子ピアノ)と千葉広樹さんのウッドベースを加えて。
実はtriolaのライブをPAを通して聴くのははじめてだったのですが、いつものふたりのtriolaも四人編成も素晴らしかった。ヴァイオリンとヴィオラの中高音域だけで構成されるデュオの面白さ。ベースの低域とローズの柔らかな和音が重なることで生まれる落着きと拡がり。波多野さんの歌声はヴァイオリンの演奏とは対照的に、決して強いものではないのですが、その繊細さを良く引き立たせる抑えの利いた演奏でした。ただ、ひとつだけ残念だったのは、会場のサイズに比して音量が小さかったこと。とても綺麗な音で、聞こえづらくはありませんでしたが、もっと音圧を感じたかった。
倉地久美夫さんは、10年程前に『詩のボクシング』で観たときと印象変わらず。基本ユルい雰囲気でギミックの利いた歌を唄うのですが、後半triolaのふたりが加わると良い感じに緊張感が出ました。かといって弦楽演奏が前に出過ぎることはなく、波多野さんのアレンジャーとしての力量を感じさせます。
宇治出身の兄弟デュオ、キセルの音楽の素晴らしさはみなさんご存じの通りです。良いメロディと丁寧に練られた歌詞を、誠実かつアイデア溢れる演奏で聴かせます。triolaの弦が加わると更に奥行が増し。その圧倒的な浮遊感はフィッシュマンズの正統な継承者と呼んでも差支えないと思います。
アンコールの最後に出演者全員で演奏したブレヒト/ワイルの"Mack The Knife"の選曲も波多野さんらしいヒネリの利いたものでした。
会場のVACANTは原宿の裏通りにある、まだ新しい木の匂いのするハコ。その名を聞いてSex Pistolsの"Pretty Vacant"を思い浮かべてしまった僕は1965年代生まれのPUNK第一世代です(笑)。でも、男子トイレの壁にはJoy Division "Unknown Pleasure"のポスターが。あながちはずれではないのかもしれません。
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