2011年7月23日土曜日

コクリコ坂から

台風のあとの過ごしやすい数日も今日まででしょうか。ちょっとした勘違いで思わぬ時間ができたので、ユナイテッドシネマ豊洲にて、スタジオジブリ作品『コクリコ坂から』のレイトショーを観ました。

昭和30年代の港町にある共学高校を舞台にした青春ドラマ。ジブリ映画はいつも街並み、建築物、遠景が魅力的です。この作品でも、おさげ髪の主人公メル(本名松崎海、声:長澤まさみ)が祖母や妹弟たちと暮す海岸線ぎりぎりまで迫った丘の上の女子寮、祖母の部屋から臨む海の眺め、思い切り昭和な地元商店街、坂道と港町、新橋の繁華街、など素敵な背景がたくさん。

特に、高校の部室棟「カルチェラタン」明治建築の吹き抜けの木造洋館は、この映画の主役と言っていいほどの存在感です。僕が大学時代のほとんどを過ごしたと言っても過言ではない部室棟は、やはり学生の自主管理に任され、黎明会館という詩的な命名に反して、それはそれは汚なかったですが、居心地の良い場所でした。

説明的な要素を最小限にした脚本は大人向けで、小さな台詞を聞き逃すと設定がわかならなくなってしまうかもしれません。親切過ぎず、僕には好ましく思えました。

ヒロインの表情が固いなあ、と最初思いましたが、キャラクター設定なんですね。時代は無愛想女子か。

ジブリ映画のサウンドトラックといえば久石譲ですが、この映画の音楽は武部聡志。時計の音にテンポをとったジャジーなオープニング曲。ピアノの単音で主人公の心の揺れを表現し、そのまま分散和音に流れていくところ。劇中のふたつの合唱曲。など、よかったです。

カルチェラタンの中でも特に汚い現代詩研究会で、学生が朗読する宮澤賢治の「生徒諸君に寄せる」。

  新しい時代のコペルニクスよ
  余りに重苦しい重力の法則から
  この銀河系統を解き放て

黄色い表紙の『チボー家の人々』を愛読書にする主人公メルが毎朝掲揚する信号旗。旗を揚げるという行為は、控えめでありながらひとつの強いメッセージで、しかもロマンチックだなあ、と思いました。

 

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