夏日。ヒューマントラストシネマ有楽町でナジーバ・ヌーリ監督作品『ハワの手習い』を観ました。
2021年秋、シャルル・ド・ゴール空港に着陸する機窓の田園風景から映画は始まる。本作の監督ナジーバ・ヌーリがアフガニスタンからフランスに亡命した。
時は遡り、2019年アフガニスタンの首都カーブル。ヌーリ監督の母親ハワが洗濯したペルシャ織のラグを手で絞り、パンをこねる。ハワが13歳のときに結婚した(させられた)30歳年上の夫は認知症になり、ハワが介護している。郊外の小綺麗な一戸建に家具は少なく、床に座って生活するため、居住空間が大きく感じられる。
男4女2の子育てを終えたハワは、伝統工芸のハザーラ刺繍と裁縫の腕を活かし、商売を始めようと考え、バーミヤンのクラフトバザールやポレソフタの市場に作品を卸すことを始める。親に教育を受けさせてもらえなかったハワは、カーブルの書店で小学生向けの教科書を買い求め、読み書きの勉強を始め、美容院で白髪を染めた。
50代で自分の人生を自ら切り開く決意をした母親の姿を捉えるカメラは希望の輝きに満ちている。離婚した娘の元夫の暴力に耐え兼ね家出した孫娘ザハラーを匿い、新たに購入したホワイトボードで文字を教わる。学びの日々は2021年8月末の米軍撤退とタリバンの政権復帰により強制終了させられます。
女性ジャーナリストであるナジーバ監督は生命の危険に晒されフランスに亡命。それが冒頭シーン。文字を覚えたハワと手紙のやりとりをする。カメラはナジーバの兄アリーに引き継がれるが、公道で母親を撮影しているところをタリバンに見咎められて殴られ、カメラはアスファルトに叩きつけられる。
2019~2024年にアフガニスタンで撮影されたドキュメンタリーフィルムは、前半と後半でまったく異なる様相を示します。女性の就業を禁じ、女子学校を閉鎖したタリバンの非人道性とそれを妨げられない国際社会に上映中は憤りを禁じ得えませんでした。
ただ冷静になると、タリバンの支持層というものがアフガニスタン国内には存在するのだという考えに至りました。貧困で充分な教育を受ける機会に恵まれず、伝統的家族観(家父長制)を信奉し、女性は家庭にいるのが幸福、という思想を持つ人々が、タリバンの示す秩序こそ国家の安定につながると考えることは(僕は共感はできませんが)想像はできます。
もうひとつ、主な被写体であるヌーリ家は、アフガニスタン国内の少数民族であるハザーラ人で、ダリー語を話し、イスラム教シーア派を信仰しています。タリバン含む多数派のパシュトゥーン人はスンニ派、顔立ちも言語も異なり、ハザーラ人を清掃業や屠畜業に従事させ、差別してきた歴史がある。そのこともこの映画を通じて知りました。


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