2020年11月23日月曜日

タイトル、拒絶

自宅から徒歩で行ける2つめの映画館。109シネマズ木場山田佳奈監督作品『タイトル、拒絶』を鑑賞しました。

JR山手線鶯谷駅前「悪質なポン引き街娼が増えています。相手の客も処罰の対象です。」と書かれた看板前で黒いブラジャー姿のカノウ(伊藤沙莉)の独白「不特定多数のベーシックスタイル、どうなんですかこの人生?」で映画は始まります。

就活に失敗しデリヘル嬢の面接を受けたカノウだが、最初の客から生理的に受け付けず嬢は辞め、同じ事務所で運営スタッフとして「女の子」たちをサポートしている。

アツコ(佐津川愛美)、キョウコ(森田想)ら、陽キャのデリ嬢がかしましく騒ぐ事務所の片隅で膝を抱えるチカ(行平あい佳)。いつも手放さない大学ノートには「先のないことしか書いてないから。恨みとか辛みとか」。

時折笑いが起こることがあっても殺伐とした空気は常に一色即発の緊張感に満ちている。そのなかで周囲に流されず常に笑顔を絶やさない売上ナンバーワンのマヒル(恒松祐里)。輪には加わらないが、彼女を中心に場が生まれる。

誰もが感情をあらわにするが、カノウだけは感情の外側にいる、そしてそれが気にくわない者になじられる。なのに自分ではなくデリヘル嬢の側に立ち最後の最後に感情を爆発させるカノウ。

荒んだ人間模様にあって、マヒルと妹(モトーラ世理奈)が話す高架橋の背景の空の青の美しさが目に染みる。

テレ朝系深夜ドラマ『女子高生の無駄づかい』で注目したマヒル役、子役出身の恒松祐里の演技が見事です。特にラストシーンの「お腹空いた」の台詞が劇中の惨状をすべて救済している。伊藤沙莉とダブル主演と言ってもいいのではないでしょうか。

入江陽のスコアも地味ながらこの映画にドライな格調を与えています。

 

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