2020年3月8日日曜日

ジュディ 虹の彼方に

ミモザの日。ユナイテッドシネマ豊洲ルパート・グールド監督作品『ジュディ 虹の彼方に』を観ました。

1939年のミュージカル映画『オズの魔法使』の主役ドロシーを演じ、圧倒的な歌唱力と可憐な容姿で16歳にしてハリウッドを代表するスターのひとりとなったジュディ・ガーランド(1922-1969)。

映画は少女時代のジュディ(ダーシー・ショウ)の画面一杯の顔のアップから始まります。しかしその生涯をつぶさに描くのではなく、47年の短い人生の最晩年のエピソードが少女時代の回想を交えて進行するという脚色です。

1968年のLA。薬物とアルコール依存症に伴う度重なる現場放棄によってハリウッドで食い詰め、一緒にドサ回りさせていた幼い姉弟は元夫に親権を獲られる。起死回生を狙って単身挑んだロンドン公演。リハーサルに用意された教会が気に入らず1曲も歌わずに帰ってしまうが、いざ本番となると生来のエンターテイナーぶりを発揮して観客を魅了する。

「子役時代はほとんど寝られなくて、フォークの使い方を覚えたのが奇跡」。長時間の撮影に耐えるために映画会社から与えられ10代の未熟な身体を蝕んだ向精神薬アンフェタミンから生涯逃れられず、うつ病に深酒も加わって千鳥足でステージに上がり、野次を飛ばした客をマイクで罵倒してしまう。

「会いたくなったらかかとを鳴らして、願いが叶う」初恋の人ミッキー・ルーニーと同じ名前の若い恋人ミッキー・ディーンズ(フィン・ウィットロック)と公演中に婚約して有頂天になれば最高のパフォーマンスで魅せ、痴話喧嘩で気持ちが荒れれば舞台も荒れる。

不安定で難しい役柄をレネー・ゼルウィガーがアカデミー主演女優賞に相応しい流石の熱演。ロンドンの劇場付マネージャーのロザリンを演じたアイルランド出身のジェシー・バックリーもチャーミングです。

スターの身勝手な振る舞いが才能の名の下に許された時代。ハイパーゴージャスなステージの裏で繰り広げられる重苦しい物語のなかで、心温まるシークエンスはロンドン在住のゲイカップルとの交流。ラストシーンの「虹の彼方に」で声を詰まらせたジュディに客席から起こるシンガロングも彼らの先導あってのこと。その後LGBTQのアイコンとなったジュディ・ガーランド(左利き)のジェンダー観を掘り下げてみてもよかったかも、と思いました。

 

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