2018年10月6日土曜日

アジア オーケストラ ウィーク 2018

神無月。台風25号が朝鮮半島に抜けて、フェーン現象で東京は夏日です。

京王新線初台駅下車、東京オペラシティで開催中の平成30年度(第73回)文化庁芸術祭主催公演アジア オーケストラ ウィーク 2018 に行きました。

フィリピン・フィルハーモニック管弦楽団
指揮:福村芳一
ギター:荘村清志
独唱:ネリッサ・デ・フアン

ロドリーゴ / アランフェス協奏曲
ロッシーニ / 歌劇「セミラーミデ」序曲
ファリャ / バレエ音楽「三角帽子」

クラシックのオーケストラといえばヨーロッパかアメリカという印象ですが、極東日本の各大都市にもあるように、あらゆる国々にオーケストラがある。そんな当たり前のことに気づかされたのは、2007年に来日したビルバオ交響楽団を聴いたときのことでした。ビルバオ交響楽団の演奏は、少々大雑把なところもありますが、盛り上がるときのテンションが尋常ではなく、ドイツやロシアのオケの「クラシックやってます」というしかつめらしい感じがなくて、終始楽しい。それ以降、機会があれば西欧圏以外のオケを聴きに行くようにしています。

アジア オーケストラ ウィークでは、2014年にベトナムのオーケストラを聴いたことがあります。今年は、フィリピン・フィル、中国の杭州フィル、そしてホストに群馬交響楽団が、東京公演は各1日ずつ、というプログラムの2日目に行きました。

荘村清志氏はクラシックギター界のレジェンド。正確無比な技術と豊かなパッション、可憐で美しい音色を存分に響かせていました。指揮の福村芳一氏はフィリピン・フィルの音楽監督も兼ねています。まるで酔拳みたいにトリッキーで柔軟なタクト。

オケはお揃いのバロンタガログ(バナナの繊維で織って無彩色の刺繍を施したフィリピンの伝統衣装)を着て、細部まで神経が行き届いた生真面目で緻密な演奏。長髪の男性団員がいない。金管が若干おとなしめですが、ロッシーニ・クレシェンドも指揮によくついていってがんばっていました。演奏直後のコンサートマスター氏の安堵とも満足とも見える満面の笑顔が印象的でした。

「三角帽子」のメゾソプラノのアリアとアンコールでフィリピンの作曲家ニカノール・アベラルド歌曲を唄った二十歳のネリッサ・デ・フアンも堂々として美しかった。

ロドリーゴとファリャはスペインの作曲家です。米西戦争でアメリカに売却されるまで、16世紀の東インド会社の時代からスペインはフィリピンの宗主国。現在でもフィリピン人にはスペイン風の名前が多い。団員の顔立ちも南欧系、南アジア系、中国系と様々。このオケ自体が1970年代当時の独裁者夫人イメルダ・マルコスによって再編されたという。歴史に翻弄されながら美しい音色を奏でてきたことを想像すると胸に迫るものがありました。


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