台風22号が関東地方に接近するなか、開場直後のノラバーのドアを開けると既に2人のお客様が。強い雨に打たれて傘や足元をびっしょり濡らして次々に到着する人たちは、なぜだかすこしはしゃいでいるみたいに見えます。
ノラバーが西武柳沢に引っ越ししてから、mayulucaさんは7月16日に続き2度目のご出演です。ドレスコードはブルー。ネイビーからライトシアンまで、サテンやニットや、思い思いのブルーを纏った人たち。
カウンターだけの細長い店の一番奥の席で前回は聴きました。今回はバス通りに面した席で曇りガラスにもたれながら、mayulucaさんの演奏するギターのサウンドホールからわずか数十センチの至近距離。小さめの音量で爪弾かれる正確なフィンガーピッキング、低音弦のユニゾンの揺らぎ、ボディを指先や第一関節でコツリコツリと叩く音、微細な音の表情が手に取るように伝わる。演奏者本人はこういう音を聴いているのか。ごまかしの利かない距離でギタリストとしての確かさを感じる。
「朝が来て/昨日が昨日になってゆくのです/失いがたいものたちを/ひとつずつ抱きしめるのです」(チャイム)、「このあいだ前に住んでいた町の駅まで続く緑道を/ひとり歩いていたら心痛くなりました」(ほんとうのこと)。
これら1stアルバム『君は君のダンスを踊る』収録曲の澄んだ抒情は、2nd、3rdと進むにつれてすこしずつ抽象化し、寓話的もしくは音韻重視に変化しましたが、今年書かれた2曲「3am」「doubt blue」の英語詞はよりシンプルでストレートに、カレッジフォーク的な曲調を伴って回帰しているのも興味深かったです。
店主ノラオンナさんの手料理ノラバー弁当は定番のポテトサラダが南瓜サラダに変わったハロウィン仕様。自家製の胡瓜と大根のぬか漬けに小茄子の昆布出汁漬けは台風サービスということで、お客様の差し入れの純米酒が進みます。
すっかり夜も更けて表に出れば、雨はすっかり上がって、透き通った深いブルーの夜空にきれいな半月が浮かんでいました。
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