2017年2月5日日曜日

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

曇天は春の兆し。ユナイテッドシネマ豊洲ティム・バートン監督作品『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』を観ました。

主人公ジェイク(エイサ・バターフィールド)は16歳。学級にいまいち溶け込めていない。見舞いに行った認知症の祖父は森で殺され両眼をくり抜かれていた。形見に受け取ったR.W.エマーソンの詩集に「ウェールズのケインホルム島を尋ねろ」というメッセージが。そこにはミス・ペレグリン(エヴァ・グリーン)が異能の子どもたちと暮す古い洋館があった。

ミス・ペレグリンは時間をコントロールすることができる鳥の化身「インブリン」。その館はナチスドイツの空襲を受ける前日である1943年9月3日をずっと繰り返すループの中にあり、毎夜リセットされている。

チャーミングなフリークスたちが活躍し、モンスターとスケルトンが闘う、ティム・バートンらしい映画。これだけのスケールとテクノロジーと予算でアウトサイダーたちを美しく且つアホっぽく描けるハリウッド映画の監督はいないと思います。この作品では得意のクリーチャーに加えタイムリープの設定や巨大艦船と大量の水の描写などにより物語を重層的に構成する一方、『シザーハンズ』(1990)に代表される初期作品や『フランケンウィニー』(2012)にあったチープな魅力は薄まっているように感じました。そしてめずらしくハッピーエンドです。

空気を自在に操り空中浮遊する水色のワンピースの少女エマ役を演じた英国人女優エラ・パーネルが恐ろしくキュートで、エヴァ・グリーンは終始格好良い。テレンス・スタンプサミュエル・L・ジャクソンルパート・エヴェレットジュディ・デンチ。脇を固める重鎮たちも楽しんで演じているのが伝わってきます。

2016年はくすんだ色調、1943年は鮮やかな画面で、主人公の心情を表現した映像美。完璧な一日は悲劇の前日。主人公はユダヤ系ポーランド人移民の家系。障碍のメタファーともいえるさまざまな異能を持つ子どもたちが親元を離れ共同生活している。ポリティカルな見方をすれば、昨今のグローバルな傾向である排他主義に警鐘を鳴らし、ダイヴァーシティ&インクルージョンの重要性を訴えているのではないでしょうか。

 

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