2017年1月8日日曜日

アサガヤノラの物語

冷たい雨の降る日曜日。中央線に乗って阿佐ヶ谷まで。Barトリアエズでウェルカム七草粥。日曜音楽バー『アサガヤノラの物語』松浦湊さん(左利き)の回にお邪魔しました。

ゴールディ・ホーンメグ・ライアンキャメロン・ディアス。大口で笑い常に口角が上がっているのは、優れたコメディエンヌの共通項だと常々思っているのですが、松浦湊さんもその系譜です。そして、どんなにネジの外れた役を演じてもインテリジェンスが滲み出てしまう。高い知性と品性を隠し持つコメディエンヌ。

湊さんがどこまで自覚的なのかはわかりません。それでも彼女の音楽が持つ美しい旋律と半歩ずれたような和声感、一弦一弦を綺麗に響かせるギタープレイ、底知れない語彙と豊かな物語性を持つ歌詞、はすっぱに見えて実はとても繊細な歌声、その才能が本人にもアウトオブコントロール、なのに全体の印象がポップ。それを楽しむという妙に捩れた共犯関係が観客との間に成立する。

頭蓋骨が砕け散る5分後に君が来た、という歌い出しの「コパン」から始まったライブ。今朝買ったウクレレに初挑戦した佐藤GWAN博さんのカバー「ハロームーン」。ライブの定番曲、サビの巻き舌がエグい「フォールインタヌキ」。

20分超の長尺スポークンワード作品「アーバン・ミス半魚人」では自らの発した物語(歌詞の中では「お話」)がひとり歩きし、尾ひれがついて、都市伝説化していくのに、まったく追いつけないカフカ的とも言える状況を、地声の独白、声色とテンポを変えた対話、アニメやCMからの引用、ギターリフのカットアップなど雑多な要素で構築していく。これは所謂レヴィ=ストロース言うところの「野生の思考」、ブリコラージュの手法では。

ノラオンナさんの提供する一月のメニューが酉年にちなんで親子丼というのに配慮して「タマゴのキミ」と卵の独白曲「言えたらな」という全6曲。曲数こそ少ないものの充実したライブでした。

終演後はお客様から差し入れられた2本の一升瓶で盛大な酒盛りに。立ち飲み屋状態の店内。チャーミングに酔っぱらう湊さん、それにつっこみを入れるノラさん。新年らしい賑やかな会に参加できてうれしかったです。

 

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