2016年9月23日金曜日

TRIOLA a live strings performance

雨が上がって湿度の高い金曜日の夜。下北沢leteへ。波多野敦子さん(作曲、5弦ヴィオラ)と須原杏さん(ヴァイオリン)の2人による最小単位弦楽アンサンブルTRIOLAを聴きに行きました。メンバーチェンジして再起動後、2回目のa live strings performanceです。

前回7月のセットリストには旧triola時代のボーカル曲が2曲ありましたが、今回はオールインストで、現在の編成になってから作られた新曲も数多く演奏され、創作の充実期を迎えているのが伝わってきます。

波多野さんの書く曲には、ポップミュージックのAメロ、Bメロ、サビも、クラシック音楽の第一主題、変奏、第二主題、展開部という構成も無く、多少のリフレインは存在するものの、総じてフリーフォームです。小刻みなパッセージから発展して大きなうねりに変化し、調性や拍子を変えながら進んでいく様は、粘液の流動や細胞の増殖と死滅をクローズアップで眺めているような感じに近い。

特に無題の新曲群は更に抽象度が増しています。緻密に設計されたスコアに則り演奏されるインテリジェントな音楽が演奏家の身体を通過しフィジカルに解き放たれる瞬間が随所にあり、あたかも一瞬の凪に深海に差す一筋の光明のように感覚が開く。そこにこのデュオのライブ演奏の魅力があります。

須原杏さんのヴァイオリンの多彩な音色。かすれた溜息から澄んだコロラトゥーラ、生真面目な面に時折見せるユーモアの欠片が大変チャーミングです。そして波多野さんのソロ曲でループマシンを駆使して紡がれるノイズは、FrippEno の"No Pussyfooting" のような美しさ。

前回聴いたときからわずか2ヶ月で厚みを増したアンサンブル。波多野さんがバックに回って縦乗りのリフを刻むとき、湿った木箱のような会場を共振させる音像の強さに、杏さんが正確なボウイングで応える。

leteのライブ限定で未発表の新曲CD-Rを毎回発表していくとのこと。次回のa live strings performanceは12月1日。年明けには正規盤のレコーディングと、とても楽しみです。



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