嵐の予感のする初秋の日曜日、恵比寿ガーデンンシネマでミシェル・ゴンドリー監督作品『グッバイ、サマー』を観ました。
女の子によく間違えられる左利きの美少年ダニエル(アンジュ・ダルジャン)が午前6時のアラームで目を覚ますシーンから映画が始まる。淹れ終えた紅茶のティーバッグはテーブルに直置き、ビスケットを浸して食べ二度寝。午前7時にセットしたアラームで再び目覚める。
母親(オドレイ・トトゥ)には「あなたは特別」と言われるが「特別なんかでなくていい。でもみんなと同じだとムカつくんだ」と答える。転校生のテオ(テオフィル・バケ)と、はぐれ者同士、スクラップを集めて家型自動車を自作し旅に出る。中2と中3の間の夏休みの冒険物語。露出オーバー気味の画面に思春期の自意識と二度とない輝きがキラキラと焼きつけられている。バカ男子ポンコツ・ロードムービーです。
「個性っていうのは型じゃないだろ。自分の選択や行動によって決まるんだ」。
原題はMICROBE et GASOIL。主人公二人のあだ名です。 ミジンコとガソリンみたいな感じ。MICROBEはマクロビオティックとも掛けているのかな。スピリチャルな自然志向に嵌った意識高い系の母親が「今日からうちは菜食」と宣言する。
そもそも、オーガニック、マクロビはプラマイゼロ。それ自体が人体に対して何かプラスの効果があるわけではなく、非オーガニック、非マクロビにより害されるものを回避する手段なのだと思います。主張すればするほど、自らの良さを伝えるよりも、相手の欠点を挙げて追い詰めてしまいがち。
ポスターには「ミシェル・ゴンドリーの自伝的青春ストーリー」と書かれています。「自伝的」が宣伝文句として成立するのは、作家自身の体験に立脚したリアリティにより重きを置いて作品を評価する層が一定以上存在するということ。僕は逆に、作家のイマジネーションの逸脱ぶりや荒唐無稽さを求めたい。
そういう意味でこの作品は、随所にゴンドリー監督らしい現実離れしたおかしなところがあって、そういう辻褄の合わなさも、赤いフェイクレザーのジャケットに学校ジャージにおっさんぽい革靴という80's的なテオの衣装や髪型の絶妙なダサさも、全部ひっくるめて中2的で素晴らしいなあ、と思いました。
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