2016年8月15日月曜日

シング・ストリート 未来へのうた

終戦記念日。図らずもアイリッシュ強化週間に。ヒューマントラストシネマ有楽町ジョン・カーニー監督作品 『シング・ストリート 未来へのうた』 を観ました。

1985年、アイルランドの首都ダブリン。主人公、15歳のコナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)の家族は、不仲で喧嘩の絶えない両親、大学中退後ひきこもる兄、建築家志望の姉。不況で父親が失業し荒れた労働者階級地域のカトリック系男子高 SYNGE STREET HIGH SCHOOL への転校を余儀なくされる。

粗野な同級生にも厳格な校長にもマッチョな校風にも馴染めずにいたが、ある日街角で見かけた美少女ラフィーナ(ルーシー・ボーイントン)に「僕のバンドのMVに出てみないか」と声を掛ける。それからあわててメンバーを探し、組んだバンドがSING STREET。ギターのエイモン(マーク・マッケンナ)と曲作りを始める。

セックスピストルズは上手いか? お前はスティーリーダンか? ロックは上手にやろうと思うな! ロックをやるなら笑われる覚悟をしろ!」

1985年といえばMTV全盛期。曲作りやバンドアレンジとMV制作のシーンが同等の比重です。TOP OF THE POPSデュラン・デュランを観ればそれ風の曲を書き、ジョー・ジャクソンザ・キュアホール&オーツ風と、兄の影響で聴いたレコードそのままをなぞる曲調。衣装や髪型、メイクアップ、ビデオの演出までそれ風にせずにはいられないのが微笑ましい。

監督は1972年ダブリン生まれで1990年代初頭にはロックバンドでベースを弾いていたという。ジャスト同世代ではないものの「あー、わかる」という瞬間が多々。The Jam "Town Called Malice"、The Clash "I Fought The Law"、はいはい、コピーしましたとも!

ブルックリン』から30年後も共通するアイルランドの美しい自然と社会的閉塞感。エクソダスの象徴としてのロンドンであり英国ポップチャートであり。そのコントラストを強調するためか、当時のアイルランドの優れたロックバンドで商業的にも成功していたブームタウン・ラッツU2ホットハウス・フラワーズザ・ポーグス等に対する言及は避けられている。あ、シン・リジィの曲は流れます。

ジョン・カーニー監督の脚本演出はタイトで無駄がなく、カメラワークや編集もスピーディで爽快なドライヴ感があります。ノスタルジックでスピリチュアル、みたいなアイリッシュ感は薄いですが、地方都市の青春ものが好きな人、バカ男子がわちゃわちゃしているのが好きな人、1980年代に洋楽を聴いていた人ならきっと楽しめる一本です。

 

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