2月のVol.37ではループマシンを用いて重層的な構築性を聴かせたmayulucaさん。今回はギターと声だけで。その正確なリズム、午後の明るい空気に完全に同化する自然で滑らかな発声。「聴く人や観る人が積極的に受け取っていかないと感じられないことが多いかなと思って」。シンプリシティゆえに際立つ美がそこにありました。
中田真由美さんの歌声は装飾音や発声がとてもアジア的だなと常々感じています。最後の「希望のカケラたち」で感極まりいくつかのフレーズが涙で塞がってしまいました。中田さん自身にそのとき去来していたものは知る由もないのですが、客席のみんなそれぞれが感情の高ぶりを憶え、僕は僕なりに昨今の社会的・個人的状況を重ね合せていました。それは彼女の持つ音楽の力に他ならないのでしょう。
昨年11月の出産以来、ひさしぶりに聴くエリーニョさん(画像)もそのひとりとしてピアノに向かい、彼女にしか出せない声で、彼女にしかできない方法で、彼女自身と身の回りの今というリアルを切り取って丁寧に差し出していました。母親になって表現に包容力が出たみたいな紋切型では割り切れない、夜泣きで眠れない苛立ちも湧き上がる愛情もないまぜにしながら、未来を見据え、ジャジーでソリッドでプログレッシブな拡がりのある音楽に昇華しています。
古代ギリシア人の考える4つのエレメント、アース、ウィンド、ファイヤ&ウォーターでいったら、3組のミュージシャンは僕にとっては「風の人」。なので「風の生まれる場所」「風の通り道」「風のたどりつく先」の三部作、初秋の乾いた風の吹く「もしも僕が白鳥だったなら」を朗読、mayulucaさんの歌詞の一節を引用した「森を出る」にはギター伴奏をつけていただきました。
今回のPoemusicaは、個々の音楽やパフォーマンスというよりも、出演者同士の関係性、時間帯や天気、差し込む陽射し、コーヒー豆を焙煎する香り、客席のざわめき、通りのノイズ、すべてが調和し、自然と感謝の気持ちが生まれ、そこに居合わせた人みんなの記憶に深く刻まれるような、美しい時間でした。
来月10月のPoemusicaは第三木曜日の夜に戻ります。またまた素晴らしいミュージシャンをブッキングしてもらいました。どうぞお楽しみに!
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Poemusica Vol.43 ポエムジカ*詩と音楽の夜
日時:2015年10月22日(木) Open19:00 Start19:30
会場:Workshop Lounge SEED SHIP
世田谷区代沢5-32-13 露崎商店ビル3F
03-6805-2805 http://www.seed-ship.com/
yoyaku@seed-ship.com
料金:予約2,200円・当日2,500円(ドリンク代別)
出演:ちみん
潮崎ひろの
桂有紀乃
カワグチタケシ (PoetryReading)
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