まだざわついているカウンターに、小さく小さく爪弾かれるウクレレのイントロダクション。低く甘くすこしかすれた声で唄い出す「こくはく」。生成りのノースリーブワンピースに腰まで伸びた真っ直ぐな黒髪。見田さんのギターがベースラインをサポートしつつ、時折はっとするようなオブリガートを被せる。
わずか数秒で店内の空気を濃密に変えてしまう。ベースメント・ミュージック。地下室の音楽。真夏の海や太陽を唄っても、ノラさんの声には、真夜中に地下室から聴こえてくるような、密室の響きがあります。
そして、自然と背筋が伸びるような心地良い緊張感と穏やかで大きな波に揺られているような包容力。研ぎ澄まされた演奏に無駄のない吟味され尽された言葉。クオリティだけをどこまでも追求していったら、結果的にエンターテインメントになってしまっていたという清廉さ。それが彼女の音楽の魅力です。
「少しおとなになりなさい」「パンをひとつ」「流れ星」といった初期の名曲。殊更今夜は「やさしいひと」が心に染みました。はじめて聴いた「今日は日曜」、アンコールで演奏されたワルツの新曲「タクト」も楽しかった。
共演した河合耕平さんもよかったです。ガットギターの弾き語りで、テンションを多用したコードと複雑な転調を持つ音楽を、しっかりしたピッキングとナチュラルな歌声でさらっと聴かせる。とてもプライベートな感触の音楽。たとえば、クラスで一番ギターの上手な男子が、自室のベッドに腰掛けて、ガールフレンドひとりに向けて演奏しているような。GPS愛を唄った「衛星の知らせ」など歌詞も面白かったです。
追加オーダーしたミュスカデもきりっと美味しく冷えて、ほんのりほろ酔い気分で明るい月を見上げながら、駅までの坂道を歩いて帰りました。
追加オーダーしたミュスカデもきりっと美味しく冷えて、ほんのりほろ酔い気分で明るい月を見上げながら、駅までの坂道を歩いて帰りました。
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