2026年6月12日金曜日

Michael マイケル

夏日。ユナイテッドシネマアクアシティお台場アントワン・フークア監督作品『Michael マイケル』を観ました。

1966年、米国インディアナ州ゲイリー。黒人低所得者向け住宅のリビングルームでジャクソン家の5人兄弟、ジャッキー(Cho)、ティト(G)、ジャーメイン(b)、マーロン(Cho)、マイケル(Vo)は "Big Boy" を練習させられている。指導しているのは父親のジョセフ・ジャクソンコールマン・ドミンゴ)。7歳のマイケル(ジュリアーノ・ヴァルディ)は歌うのに飽きて窓に顔をつけて通りを眺めるが、父ジョセフに厳しく咎められる。母ケイト(ニア・ロング)が柱の陰から心配そうに見守っている。

初ステージを成功させて帰宅した兄弟をリビングに集め、細かいミスを指摘し練習させようとするのに反論したマイケルの尻をベルトで執拗に鞭打つジョセフ。

マイケルといえばジャクソン。ジョンやポール、ミックとキースのようにアイコン化したスーパースターのデビューから1988年の "BAD World Tour" におけるロンドンウェンブリースタジアム公演までの22年間(7~29歳)を描いた伝記映画は、主役をマイケルの甥(ジャーメインの息子)ジャファー・ジャクソンが演じています。

幼少期からショービズ界に浸かり同年代の友だちがいないマイケルは父親の暴力という現実から逃避するために「ピーター・パン」や「オズの魔法使い」などの児童書にのめり込み、心を開ける相手は動物たちと母ケイトだけ。その環境が育んだ感性は作品づくりにおいて独特の世界観を築いたが、人格形成面ではマイナス面が大きかったはず。駄菓子屋であんずボーをちゅーちゅー吸ったり、放課後マックで宿題をしたり、友だちと過ごした時間は無駄じゃなかったんだな、と思いました。

はじめての整形手術は『オフ・ザ・ウォール』と『スリラー』のあいだ。バブルス君は意外と早い時期に同居を始め、自宅の庭にキリンがいますが、あまり深く掘り下げられません。我々世代は1980年代に『スリラー』『BAD』からヒットを連発するマイケルをリアルタイムで見ていましたが、本作以後の世界を生きてきたより若い方たちは、スポーツ紙の一面に「顔面崩壊」と書かれたり、自宅をネバーランドと称して大勢の子どもたちを住まわせたり、奇行ばかりが取りざたされる変人という認識なのかもしれません。

悪役を父ジョセフに絞ったことが物語を非常に分かりやすくしている反面、「次は目を見て話す」と言いながら、レコード会社の重役や弁護士に頼って、父親と対峙しようとしないマイケルの弱さをきちんと描いているところは好感が持てる一方、顧問弁護士ジョン・ブランカマイルズ・テラー)とジョセフが雇った運転手兼ボディガードのビル・ブレイキーリン・ダレル・ジョーンズ)は少々美化されているのではないかと思います。

歌唱シーンの歌声は、マイケルとジャファーのミックスとのこと。ジャクソン5のドサ回り先のペニーアーケードで「アイル・ビー・ゼア」を歌い白人女子たちをも虜にするマイケル、モータウンレコードベリー・ゴーディラレンズ・テイト)が父ジョセフに「あんたはスケジュール調整だけしてくれ」と言うところ、クインシー・ジョーンズとの初レコーディングセッションの「今夜はドント・ストップ」、「今夜はビート・イット」のMVの撮影のためギャングスタにコネのあるビルの手引きでアンダーグラウンドのストリートダンサーたちをスカウトする場面など、心躍るシーンが多々あります。

ラトーヤジェシカ・スーラ)はたびたび登場しますが、兄弟姉妹でマイケルの次に売れ今もなお現役の妹ジャネットは名前すら出ないのは大人の事情でしょうか。モータウンのA&R担当スザンヌ・ド・パッセを演じたローラ・ハリアーの美しさには息を呑みました。

 

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