2019年12月14日土曜日

Smoke デジタルリマスター版

師走の小春日和。シネマイクスピアリウェイン・ワン監督作品『Smoke デジタルリマスター版』を観ました。

舞台は1990年夏、NY市ブルックリン3丁目7番街の角に建つ煙草屋の店主オーギー・レン(ハーヴェイ・カイテル)。常連客で作家のポール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート)は4年前の銀行強盗事件で妊娠中の妻を亡くしている。ある夜、閉店直後の店に煙草を買いに来たポールは、オーギーが毎朝自分の店の街角を撮った4000枚以上の白黒写真を見せられる。そこに偶然写り込んだ亡き妻エレンが通勤する姿を見つけたポールは慟哭してしまう。

その余韻で覚束ない足取りのまま通りに出たポールは車に轢かれそうになり、ラシードと名乗るアフリカ系の家出少年(ハロルド・ペリノー・ジュニア)に助けられる。

ポール・オースターの短編小説『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』を基にして、オースター自身が脚本を書いたこの映画を劇場で観るのは、1995年の公開当初、2016年のデジタルリマスター版公開時、そして今回が3度目。25年に亘りスクリーンで見続けていることになります(ちなみにいままで劇場で一番回数多く観たのはウォン・カーウァイ監督の『天使の涙』で4回なのですが、いずれも公開時とその翌年です)。

2時間弱の上映時間は「1. ポール」「2. ラシード」「3. ルビー」「4. サイラス」「5. オーギー」と、登場人物の名を冠した5章立てになっていますが、それ以外にもすべての登場人物、エピソード、伏線が絡み合い、過去の不幸な体験も最終的に貸し借りなしのイーブンに収まる気持ち良さは、舞台が夏でも、衣装やセットがきらびやかでなくても、クリスマス映画と呼ぶに相応しい。

時が経ち、主要登場人物たちと自分の年齢が同じぐらいになり、感じ方も変わってきました。今回はクラック依存症のフェリシティ(アシュレイ・ジャッド)が、心配してスラム街を訪ねてきた両親を罵倒し追い返したあとに見せるなんとも言えない複雑な表情にぐっときました。そして書店員エイプリル(メアリー・B・ウォード)は何度観ても可愛い。

素晴らしい脚本、無駄のない演出、あたたかなユーモアを感じさせるカメラワーク、達者な役者たち、魅力的な音楽がパーフェクトに調和した傑作であることは、回を重ねるごと実感しています。

 

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