2019年5月14日火曜日

ルート・ブリュック 蝶の軌跡

小雨降る火曜日の夕方、日比谷から東京メトロの地下コンコースを歩いて大手町まで。東京ステーションギャラリーで開催中のルート・ブリュック展『蝶の軌跡』を鑑賞しました。

ルート・ブリュック(1916-1999)はフィンランドとオーストリアのミックス。スウェーデンで生まれフィンランドの首都ヘルシンキ郊外アラビア地区にある名窯アラビア製陶所内に1932年に設立された美術部門(Art Department)で活躍した作家です。

展覧会ポスターに使われている「ライオンに化けたロバ」を見ると、モード・ルイス風なフォークアートの愛らしいイメージですが、生涯を通じて制作した膨大な作品群、特に1960年代後半、50歳代以降のものは緻密な計算と直感と偏執が混在する「芸術作品」としか呼びようのないものです。

それ以前の作品はいわゆる「用の美」であり、1枚の皿や灰皿やレリーフとしてチャーミングに完結していました。1959年作の「都市」がひとつの契機となり、多数のタイルのパーツを組み立てて作品を構成する手法に変わります。インド旅行を経て1969年に発表した「黄金の深淵」で抽象表現を獲得し、より微細で構築的に転換する過程で「用途」から自由になり、最後にはタイルの凹凸による陰影だけが残る。

1978年の「泥炭地の湖」の底知れぬ深みと水面の滑らかで暗い光沢、1979年の小品「忘れな草」白と水色のグロスとマットだけで構成された可憐なミニマリズム。1960年代後期の多色ながらシンプルなブロックチェックによるテキスタイル作品に惹かれました。

東京駅の赤茶けた古い日干し煉瓦の壁の乾いた質感としっとりしたタイル作品のマッチングとコントラストも良かったです。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿