晩秋から初冬へ移る街並みを関東バスの車窓から眺めながら。阿佐ヶ谷 harnessで開催された『中田真由美の歌劇なワンマンショー!2017』本編26曲、アンコールを含め全27曲を2時間強で。
4年前に下北沢SEED SHIPのPoemusica Vol.22で共演したのをきっかけにその後もご一緒させてもらったり、観客としてライブにお邪魔したりしています。ステージで見せる明るい笑顔とは裏腹にどこか人を寄せ付けないような雰囲気があって、面白い人だな、と思っていました。
今日のMCでも「警戒心が強くて」と言っていましたが、もしかしたらそれは誰かに裏切られないために自分を守っているのではなく、自分の才能と揺るぎなさが誰かを傷つける可能性を無意識のうちに恐れていたのかもしれません。その殻が徐々に取り払われ、オープンな空気を纏うようになって、それが歌唱にもギター演奏にも現われていました。
「僕、君と考えるのが好き」(くらげくん)という歌詞にもあるように、中田さんは考える人であり、思考の果てにポンっとホップして広大な感覚の領域に至るような音楽を創造しています。歌わせてもらう、とよく言いますが、お客様とか音楽の神様とかではなく、体内に存在する常在菌や大気中の埃粒の輝きやそういったアニミズム的なものが彼女を歌わせているように思えます。
光景が目に浮かぶような、とは詩や歌詞を褒めるときによく聞きますが、それだけじゃないと僕は思っています。意味や視覚に像を結びづらい抽象的な音や言葉の連なりであっても、それが感情や記憶のテクスチュアに直結したときに最も高揚します。中田さんの楽曲にはそういう瞬間が多々あって、僕はそこに惹かれるのだと思います。「いつもとすこし違ったものを見に行きましょうよ」(電車に乗って)、と新しい切り口で世界を見させてくれるからです。
レアな曲がたくさん聴けたのもワンマンならでは。中田さん自身が弾くギターも、2曲にゲスト参加した夏秋文彦さんのHAMMOND SS S-27H(ソプラノ鍵盤ハーモニカ)の響きも大変に美しいものでした。
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