夕立が上がった水曜夜。下北沢leteへ。TRIOLA a live strings performance、波多野敦子さん(作曲、5弦ヴィオラ)と須原杏さん(ヴァイオリン)の現体制で再始動後、1周年となる5回目のワンマンライブにお邪魔しました。
珊瑚虫の産卵をイメージし、浅瀬に差す陽光のたゆたいを描いたようなスローナンバー "CORAL" から始まったライブは、2曲目以降怒涛の新曲ラッシュ。2012年3月の triola presents "Resonant #7" のレビューで「はじめて披露されたふたつの新曲のうち、『新曲2』とだけ紹介されたインストゥルメンタル・ナンバーの逸脱ぶりがすごかった」と書きましたが、その「新曲2」が初期の習作に思えるぐらい、現在のTRIOLAの音楽は充実した逸脱感に溢れています。
ヴァイオリンとヴィオラという弦楽器2棹のみによる生演奏は、エフェクターこそ使用しているものの、あくまでも味付け程度で、leteのサイズだと基本的には生音の存在感が強いのですが、にもかかわらず、急発進、急加速、急停止の繰り返しにより立ち現れる感触は、ノイズ/インダストリアル、テクノ/エレクトロニカ、ミニマル/アンビエント。緻密で硬質な波多野さんのスコアをどこまで有機的且つ柔軟に再構築するか、踏み外すぎりぎりのエッジを模索するようなスリルがあります。
以前のtriolaのワンマンでは、肖像音楽といって、観客のひとりのプロフィールを聴いて即興演奏をするコーナーを時々設けていました。今回は客席からお題をもらい、杏さんの先導でリアルタイムでアンサンブルを組み立てるという枠があり、「桃」「金魚」「暑い」の3曲がその場で創られ空間に消えていきました。
そのプロセスを間近に聴くと、杏さんはどちらかというとフレ―ジングから、波多野さんはヴォイシングからアプローチしているのが特徴的でした。かつての中近東/東欧寄りの哀愁漂うメロディも素敵でしたが、「金魚」のオリエンタルな旋律を聴くと、東アジア的な曲調も現在のTRIOLAには似合うんじゃないかな、と思います。
波多野さんが「部屋着姿」、杏さんが「すっぴん」と言う、会場限定CD-Rのスタジオテイクは繊細且つ丁寧に配慮が行き届き、ワイルドな縦乗りのライブ演奏とはまた異なる魅力がありました。
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