2017年6月3日土曜日

カフェ・ソサエティ

水無月。日比谷TOHOシネマズみゆき座で、ウディ・アレン脚本監督作品『カフェ・ソサエティ』を観ました。

舞台は1930年代ゴールデン・エイジ。NYブロンクス出身のユダヤ人青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)はキャスティングエージェントとして成功した伯父フィル(スティーブ・カレル)を頼ってハリウッドに出る。フィルの秘書ヴォニー(クリステン・スチュワート)に恋をするが、彼女は伯父の愛人だった。

一度はヴォニーの心を掴んだボビーだが、結局ヴォニーはフィルと結婚してしまう。失意のボビーはニューヨークに帰り、兄ベン(コリー・ストール)の経営するナイトクラブのマネジャーになって成功する。そして数年後の再会。

「片想いは結核よりも多く人を殺す」。得意のロマンティックコメディをアレン監督が職人芸で魅せます。ストーリーが斬新でなくても、ギャグやスラップスティックがなくても、随所にセンスが光る。

ヴォニー「夢は夢よ」、ボビー「永遠に続く感情もある」。気の利いた台詞ときめ細かい演出で登場人物の揺れる心情を描き、映画の後半にはきっとみんな主人公ボビーを応援したくなると思います。

ただのよくあるラブストーリーに終わらないのは、ボビーの実家のユダヤ人一家のひとりひとりがエキセントリックで面白いから。興奮するとイディッシュ語になるけれど「こちらは雨よ。美しいけれど物悲しい」と息子に詩的過ぎる手紙を書く母親。理屈っぽい哲学者の義兄。そして息をするように自然に気に入らない者たちを銃殺する実兄。カリカチュアライズされた描写が最高に笑えます。

全篇に流れるノスタルジックなジャズVince Giordano And The Nighthawks の"The Lady Is A Tramp" がメインテーマ)、シャネルが提供したハリウッドセレブたちのゴージャスな衣裳。名匠が肩の力を抜いて、手を抜かずに創ったチャーミングな工芸品を堪能しました。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿