快晴の土曜日、東京メトロで銀座一丁目まで。丸の内TOEI②で『映画 鈴木先生』を観ました。2011年春クールにテレ東系プライム枠で放送された武富健治の漫画が原作のドラマの映画化です。
鈴木先生(長谷川博己)は三鷹市立緋桜山中学校2年A組担任の国語教師。黒縁眼鏡とループタイが似合う爽やかイケメン。妻麻美(臼田あさ美)は妊娠中だが、クラス一の美少女小川蘇美(土屋太鳳)に性的妄想を抱くという新しいタイプのアンチヒーローを演じています。
Lesson11と銘打たれた劇場版のストーリーは生徒会選挙を軸に進みます。小川蘇美が生徒会長に当選し「まず第一に公約通り先生と生徒の恋愛を自由とします!」と宣言する映画冒頭の妄想シーン。そして実際の選挙では同じ2Aからふたりが生徒会長に立候補してしまう。そのうちのひとり出水正(北村匠海)の出馬は、生徒会選挙制度そのものに異議申し立てするための行動だった。そして投票の日、別の意味で学校教育に疑問を持つひきこもりの卒業生(風間俊介)が小川蘇美を人質に立てこもり事件を起こす。
「全員参加で公正な選挙」という学校が決めたスローガンは正しいのか。「少数派でもがんばればなんとかなることなら僕らは絶望したりしません。社会の不条理を生徒に教えるための選挙ですか?」。昨年末の衆議院選挙の結果を見て同様の感慨を持った方も多くいるのではないでしょうか。
立てこもった卒業生の「学校では正直にまじめにと教わった。そんなものは社会で何の役にも立たない。まじめな人間は淘汰され、ずる賢いやつが成功する」という主張。それに対して「学校は不良や問題児に手間をかけ、手のかからない普通の生徒の摩耗の上に成り立っている」と共感を示す鈴木先生はスタンガンに倒れてしまう。
『キサラギ』『リーガル・ハイ』を手掛けた古沢良太の緻密な脚本が冴え、すべてのシーンが見逃せないスリリングな展開。鈴木先生のモノローグ中心の前半、モノローグが消え表情とアクションで見せる終盤の対比も見事です。
そしてヒロインを演じる土屋太鳳の透徹したまなざし。「冷静な自分を演じているだけ」「壊れることを自分に許しちゃ駄目!」と言うときの毅然とした美しさには、鈴木先生でなくとも恋してしまうでしょう。まだ17歳の彼女には、武井咲、剛力彩芽らの次の世代の中心的存在となる大器の予感がします。
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