グランドピアノのあるライブスペース SEED SHIP。今回共演したミュージシャン3組ともそのピアノを弾いたのですが、同じ楽器でも演奏家によって音色が全然違うんですね。それぞれ素敵でした。
遠雷のような不思議な音色の打楽器(※画像参照)に導かれて最初に登場したのがエリーニョさん。まだ若いシンガーソングライターで、その音楽は初期の Vanessa Carlton を想わせるような、はつらつとした躍動感溢れるもの。と思いきや、Bill Evans 的な雰囲気のジャジーで落ち着いたラウンジっぽいピアノも聴かせる。音楽的な引き出しの幅広さを持ち、特徴ある良い声も耳に残ります。終演後にお話ししたときに、Macy Gray が大好き、とおっしゃっていました。
二人めは作曲家でピアニストの平井真美子さん。映画やCMなど、映像の音楽を多く手掛けている方で、曲調はミニマルでリリカルなのですが、華奢な身体、細い指からは想像がつかないダイナミックな演奏をする美人です。雄弁なピアノと対照的に、たどたどしいMCがチャーミングで、言葉に詰まった瞬間、指が鍵盤に触れ、図らずも鳴った一音に「ピアノがしゃべっちゃった」と。客席をほぐす天然の空気をまとっています。
そして、Little Woody Animation こと 植木克巳さんの映像作品も楽しいものでした。クレイアニメのイントロダクションに続いて線描アニメがふたつ。猫が主人公の作品ではネコ語、タコ兄弟はタコ語、いずれも作者本人の声の早回しに日本語の字幕が付く。その架空の造語が東欧のどこかの国の言語のようで、ところどころ現れる固有名詞だけがぼんやりと浮かび上がる。脱力した画風、スクリプトと相まって、客席の笑いを誘います。
最後に中ムラサトコさん! ループ・ステーションで自らの声をサンプリングして、ピアノと生声を4度、6度で重ねていく。そこにスイング・ジャズ、歌謡曲、ブギ、都々逸、音頭といった土俗的な音楽や、ジャンべも加わって怒涛のように盛り上げます。妖怪人間ベムやハイスクールララバイまで飛び出し、会場全体がトランスしながら大爆笑という、いまだかつてない音楽体験をしました。まさに「生まれる前から歌唄い」。自由で生命力溢れ、楽しくて、雑多。聖俗併せ持つシャーマニックな音楽です。終演後「雨降ってますよ」とお伝えしたら、外は冬の雨~♪ と、氷雨を全力で熱唱。ほんとに唄うのが好きなんですね。
そして SEED SHIP から、もうひとつうれしいお知らせが。前世紀の終わりに勃興したトーキョー・ポエトリー・シーン。その中核となった高田馬場 Ben's Cafeの"into the deep"、原宿Johnbull の"BOOKWORM" と並ぶ伝説のオープンマイク、西麻布Ojas Loungeの"everyness" が、2012年4月8日(日)にSEED SHIPで、なんと12年ぶりに復活します。春を迎える楽しみがもうひとつ増えました!
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