東京が今年一番の冷え込みを記録した金曜日。地下鉄を乗り継いで渋谷まで。京都在住の画家足田メロウさんからお誘いをいただいて、UPLINK FACTORYで開催された「ゆーきゃん 3rd Album ”ロータリー・ソングズ”発売記念ライブ 東京編」へ。
ふわふわの茶髪に黒縁眼鏡、純白のシャツ、ベルボトム・ジーンズ、裸足で登場した今日の主役ゆーきゃんは京都西陣に暮すシンガーソングライター。生ギターを爪弾きながら、オフマイクでささやくように優しい声で歌うそのスタイルは、さしづめ大人になった星の王子さま。
旋律にも和声にも歌詞にも演奏にも、表面上どこを取ってもエッジの見あたらないその音楽が、逆に強靭なスタンスを感じさせるから不思議です。サポートするふたりの腕利きミュージシャン、エマーソン北村(key)、田代貴之(b、ex.渚にて)も、その柔かな空気を守るように大切に丁寧に音を紡いでいきます。
そして今回の新譜のジャケットと歌詞カードを描いた足田メロウのライブペインティング。曲の雰囲気に合わせて、あるいは歌詞のストーリーに寄りそうように、淡く儚い線と色を添えていきます。今回は生成りの画用紙に水彩とパステルで描き、それをビデオカメラとプロジェクターを使って、ステージ後方のスクリーンに投影するという手法でした。
メロウさんのライブペインティングを言葉で説明するのはとても難しいです。手のひらにしぼり出した白い絵の具を画用紙に置く。そこから偶発的に発生する白い面にパステルで線を加えて具象化する。たとえば鳥、たとえばウサギ、女性の横顔、小さな家。一本の線はあるときは木の幹となり、曲が進むのにつれて葉をつけ、花を咲かせる。あるときは地平線となり、愛犬の待つ我が家が建つ。
通常の絵画制作のように、画家の内部に完成形が存在し、そこに向って筆を加えていくというよりも、一枚の絵の過程のいくつかがそれぞれ複数の完成形であり、それを破壊することで次のヴィジョンに向かうというような。しかもそのひとつひとつがきゅんきゅんくるという。すみません、全然説明できてないですね。全くもって百聞は一見にしかずです。
共演した二組もよかったです。アニス&ラカンカは、ニュージャージーから来た幼馴染(嘘)二人組。大勢の羊や牛と暮していて、鍬ですくったかいばをぶつけあってふざけているときに作った曲(大嘘)を演奏します。実は、埋火の見汐麻衣とmmm(ミーマイモー)が組んだハードコア・アシッド・フォーク・デュオ。おっかなくてキュートでちょっと笑える。たとえて言うなら、歯車の外れた大貫妙子がふたり、ソニックユースを従えて歌っているような感じです。
長谷川健一さんも京都から。アコースティックギターでベースラインを正確にくっきりと響かせる技巧は本物でした。
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