こどもの日。クラシック音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2025」の3日目、最終日は午後の3公演を鑑賞しました。
ルカ・ファウルーシ(Vn)
水野斗希(Cb)
バーンスタイン:ウエストサイド・ストーリー(メドレー)
3日連続でハンソン四重奏団。ソリストとコントラバスが加わったアンサンブルは、日本語が堪能なアントン・ハンソン氏の「今日のプログラムは色々な曲が入っていますけど、拍手のほうはいつでもご自由に」というMCで始まる、ヴェネツィアの春、パリの夏、ブダペストの秋、ニューヨークの冬を巡る旅という趣向。勢いのあるインテンポの縦ノリで若さ溢れる演奏は、23歳長身のルカのヴァイオリンが表情豊かです。アンコールはカザルスで有名なカタルーニャ民謡「鳥の歌」でした。
■公演番号:345
ホールG409(シェーンブルン)17:30~18:15
オリヴィエ・シャルリエ(Vn)
ルイ・ロッド(Vc)
2018年と2024年のLFJでも現代曲を聴いたシャルリエ氏のバロックに興味深々だったのですが、20世紀ノルウェーの作曲家ヨハン・ハルヴォルセンはかなり自由にアレンジしており、実質ヘンデルの主題による変奏曲。曲が進むにつれ破調するスリリングな展開でした。ラヴェルのソナタはドビュッシーの追悼曲とは思えないミニマルミュージックの先駆型であり、無調性に踏み込んでいる。ダブルアンコールのエルヴィン・シュルホフのジンガレスカもミニマルです。
■公演番号:336〈1972年・インドネシア〉
ホールD7(セント・ポール)19:30~20:15
北村朋幹(Pf)
ジョラス:ソナタのためのB</div>
1972年にフランスのTVドキュメンタリー番組でバリ島を訪れた3人の作曲家のピアノ曲集。ノイズの奔流と一瞬の静寂。ガムランの影響は言われてみればという程度で、音楽とは何か、音とは何かを問い直す50年前の前衛を現在どう聴くかと問われているような体験。肘による打鍵はフリージャズでも行われるが、違うのは楽譜の存在か。譜めくり係を置かずピアニスト自らがめくるのだが、めくり方に過剰な緩急があり、それはおそらく譜面に記載されていない。楽譜とは、という問いにもつながる。
北村朋幹氏は靴を履いていないが靴下は履いている。轟音の内にいくつもの疑問符が交錯し、祭りの終わりの寂寥感を吹き飛ばされる爽快さ。アンコールのバルトーク「バリ島から」はただただ美しかったです。