2020年10月4日日曜日

真夏の夜のジャズ 4K

金木犀の候。恵比寿ガーデンシネマバート・スターン監督作品『真夏の夜のジャズ 4K』を鑑賞しました。
 
米国ロードアイランド州ニューポートはその名の通りの港町。洒落た別荘が建ち並ぶビーチリゾートでもある。1954年に始まり現在も続く野外フェスの第5回1958年の記録映画です。大学生だった1980年代にVHSの粗悪なコピーで断片的には観たことがあるのですが、今回4Kリマスターされたということであらためて全編を通して観ました。

1曲目はジミー・ジュフリー・スリーで "Train and the River"。ジュフリーのテナーサックス、ボブ・ブルックマイヤーのバストロンボーン、ジム・ホールのギターというリズムレストリオの脱構築ブルース。つづくセロニアス・モンク、終盤のチコ・ハミルトン・クインテットあたりのアブストラクトな演奏が当時の最先端音楽だったのだと思います。

際立つカメラワーク。ブルックマイヤーを背景にジュフリーの横顔をひたすら長回しする。ジャズの愛好家なら楽器を操る指先にも注目したいはずだが、完全スルーで画角に入らない。モンクの鍵盤も映らない。撮影当時29歳の気鋭のファッションカメラマン、スターン監督の美学が全編に貫かれています。

そして真っ赤なズートスーツに口の端でリードをハスにくわえる金髪のジェリー・マリガンは、ポール・シムノンか、シド・ヴィシャスか、と見紛う格好良さ。

裕福そうな白人中心のファッショナブルな美男美女を揃えた客席の前列部分は実は仕込みだったという話は以前からありましたが、真偽の程はわかりません。1958年はモータウン創業の年チャック・ベリーの今作への出演に象徴されるロックンロール黎明期、まだぎりぎりジャズがユースカルチャーだった時代。ライブ毎に過剰な即興が課せられるストレスを麻薬と酒でスポイルしたジャズのダークサイド、Rebel Musicの要素を排除したこの作品には、こだわりの蕎麦屋のBGMにジャズが流される現代に続く何かがあると言ってもいいのではないでしょうか。

ルーズでドラッギーなジャズを聴き続けた耳に、チコ・ハミルトン・クインテットのチェロ奏者ネイサン・ガーシュマンが薄暗いリハーサル室でひとり上半身裸で弾くJ.S.バッハ無伴奏チェロ組曲第1番プレリュードが清涼に染み渡ります。

4Kテクノロジーということでは、マヘリア・ジャクソンの吐く息まで映し出しますが、温暖化以前は夏でも夜は息が白くなったのか、昨今の世相を映して飛沫なのかは定かではありません。

この1958年のニューポートジャズフェスティバルにはマイルス・デイヴィスも出演しています。しかも翌年にあの超名盤 "Kind Of Blue" をレコーディングするのと同じジョン・コルトレーンビル・エヴァンスを擁するクインテットですが、映画はそのことには毛ほども触れません。気難しいマイルスが完璧主義を発動させ、すべてボツにしたのだろうと容易に想像がつきます。

 

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