冬晴れ。高円寺純情商店街を一本入った裏路地。狭い階段を上り靴を脱ぐ。大陸バー彦六は週末の午後喫茶東京鼠になります。
詩人馬野ミキさんが今年8月に始めた月例イベント『銀河鉄道の昼』に行きました。
いまお。彼と出会ったのは確か2004年、大学コンソーシアム京都で開催されたポエトリーリーディングワークショップに僕がゲスト講師として招かれたときの参加者でした。初めて人前で朗読したというそのときのひりひりした感じをいまでも鮮明に憶えています。「詩の朗読は、詩を朗読することではなく、朗読が、詩を実現することだ。」という彼の一行が今回のイベントの惹句。幼子に「なんで朗読するの?」と無邪気に尋ねられ「話すのが下手で、書き言葉の孤独に耐えられないからだよ」と答える。
今年4月に『俊読2017』で共演したときが初対面だった吉田和史さん。音叉を叩いてガットギターを調弦するところからパフォーマンスが始まっている。リリカルかつ清澄、正確で可憐なパッセージとロマンチックな旋律に乗せ、すこし鼻にかかったハスキーボイスで歌う都市生活者の憂鬱。エドワード・ホッパーの絵画のように、人々が出会いすれ違っていく様を額縁の外から冷徹に眺めている。一人称で歌っていても乾いた眼差しが通底しているのは彼がvoyant(見者)であり、僕も自身のその傾向を自覚しているので、共感できる部分が多いです。
去年今年と最も回数多く朗読を聴いたのが小夜さんではないかと思います。畳に正座して出番待ちする姿が美しかった(画像参照)。ポエトリースラムジャパン秋大会東京Cのパフォーマンスが「動」に振り切ったものだとしたら今日は「静」。言葉と声に集中しているように見えました。「オレンジ」は昨年プリシラレーベルで1stCD『無題/小夜』を制作した際に上野動物園のフラミンゴ舎の前でレコーディングし、結局お蔵入りにした詩。もう一度あの作品に最適な環境を選んで、次のアルバムに収録したいと思います。
馬野ミキさんのポエトリーリーディングには心を掴まれるものがありますが、ガットギター弾き語りの歌もよかったです。清濁併せ呑んだ果てに小さな灯火みたいな希望と聖性をほんのすこしだけ覗かせる詩作品に対して歌詞は、より微細な繊維で濾過されたような純粋さと精神の震えめいた響きが前面に出ています。「マジでビビるこの時に/俺はひとり蟻んこを見つめている」と訳した「マイ・ウェイ」のカバーには度胆を抜かれつつ感動。
毎月最終日曜日に喫茶東京鼠で開催される『銀河鉄道の昼』。次回2018年1月28日(日)はMYヒーロー究極Q太郎氏も出演とのこと。来年を迎える楽しみがひとつ増えました。
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