レコーディングスタジオでジョー・ストラマー(左利き)が「白い暴動」を歌う。バンドの演奏はヘッドホンから漏れ聞こえず、ストラマーのシャウトだけが映画館に響き渡る冒頭シーンから引き込まれる。
1977年にデビューしたロンドンパンクの雄 The Clash のボーカリスト ジョー・ストラマー(1952-2002)の生涯を回顧するドキュメンタリー映画です。
1977年にデビューしたロンドンパンクの雄 The Clash のボーカリスト ジョー・ストラマー(1952-2002)の生涯を回顧するドキュメンタリー映画です。
外交官の父親の赴任地であるイスタンブールで生まれ、カイロ、メキシコシティ、西独ボンに暮らし、ロンドン郊外の全寮制中高ではリーダー的存在だったが、素行が悪い。1歳上の内向的な兄はネオナチに傾倒し在学中に薬物死。パブリックスクール卒業後はアートスクールに進み、ヒッピームーブメントの最中squattering(空家不法占拠)してLSDに嵌る。ロックンロールバンド The 101'ers を結成するが、前座に起用した SEX PISTOLS に衝撃を受け、パンクバンド THE LONDON SS のギタリストだったミック・ジョーンズと The Clash を結成する。
「40歳になっても演奏し続けますか?」とインタビュアーに問われ「尊厳を保ちたい」と答える20代のストラマー。故人のドキュメンタリーでは友人知人のコメントが中心になることが多いですが、本人のインタビュー音声が多く使われているのが特徴的です。第二次世界大戦中にナチスドイツ占領下のヨーロッパ諸国向けにBBCが放送していた "London Calling" の番組名(The Clashの3rd album名でもある)を引き継いで1998~2001年にストラマーがDJを務めていた国際放送の音声も随所に挿入されており、情報量は俄かに処理しきれないほど多いです。
焚火を囲んで故人を偲ぶのは、101'ersとThe Clashの元メンバーはじめ、級友、元恋人たち、ボノ、レッチリのフリーとアンソニー、ボビー・ギレスピー、The Slits/The Raincoatsのパルモリヴ、ジョン・キューザック、ジョニー・デップ、映画で共演したコートニー・ラヴ、と豪華。なかでもThe Clashの初期メンでのちにPiLの結成メンバーになる故キース・レヴィンの晩年の姿が見られたのがうれしい。欲を言えば現在のポール・シムノンも見たかったです(The Clashのフッテージのシムノンは全カットかっこいい)。
SEX PISTOLS の故マルコム・マクラーレンにあたる、The Clashの悪徳敏腕マネジャー(とされる)バーニー・ローズが意外に若くてハンサム。クスリをキメて楽屋の洗面台を枕にして眠る姿が映ります。
革命家気質だが情に厚い親分肌というストラマーのパブリックイメージをなぞるも、育ちの良さが随所に垣間見える。ライブ会場前の路上でチケットを手売りし、2人連れのギャルに「行けたら行く~」と軽くいなされ苦笑する2000年頃のザ・メスカレロス時代の映像にロックスターの尊大さは微塵もない。
終映後のピーター・バラカン氏によるトークショー(司会は判澤正大氏)では、バラカン氏が現地で見た1982年の中野サンプラザ公演の楽屋口で出待ちするファンひとりひとりにサインし話を聞くストラマーの姿や出演しない年も自費でフジロックフェスティバルに来場し、テントを張って、たまたま気づいたファンと気さくに交流していたなど、心温まるエピソードが聞けました。
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