夏日。神保町岩波ホールにて、パオ・チョニン・ドルジ監督作品『ブータン 山の教室』を観ました。
新米教師のウゲン(シェラップ・ドルジ)は幼い頃に両親を亡くし、ブータンの首都ティンプー(標高2200m)の集合住宅で、テレビを見ながらマニ車を回し続ける祖母と人住まい。オーストラリアに渡ってミュージシャンになることを夢見ているが、ブータンでも最奥地にある人口56人のルナナ村(標高4800m)の学校への赴任を命じられる。
山道を一日バスで揺られ、そこからは徒歩。山小屋は最初の一泊だけで、あとはテント泊しながら舗装されていない山道を一週間かけてたどり着いた村で大変な歓待を受ける。しかし電気もガスも水道も道路も通っていない村の学校には黒板どころか窓ガラスも歯ブラシない。
ノースフェイスのマウンテンパーカーとリュックにゴアテックスのトレッキングブーツ、iPod Classicに刺したオーディオテクニカからエレクトロニカ、ぐらい都会っ子なウゲンは、山道でも自分の悪態を聞いてもらいたいときしかヘッドホンを外さないが、数日で充電は切れてしまう。
最初は文句を言いながらも、授業や村人との交流を通じて徐々に変わっていく主人公の姿が、淡々と描かれ、別れのシーンも過剰に感情的な演出がなく好感が持てました。
主要キャスト数名以外は本当の村人が演じているということですが、子役たちがみな素晴らしいです。特に、クラス委員ペム・ザム(ペム・ザム)は、若干盛り気味に言えば『ミツバチのささやき』のアナ・トレント級の愛くるしさ。
上映館のロビーで無料配布していたパオ・チョニン・ドルジ監督のオンラインインタビューによると、村に映画館はなく、クランクアップ時に発電機を置いてきたが、その後のコロナ禍により本作の上映は実現していないとのこと。撮影隊がルナナを離れるのと入れ替えに3Gネットワークを敷設する通信会社が村に入り、いまではペム・ザムがTikTokを送ってくるそうです。
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