降り続く雪についた足跡を俯瞰で追うカメラ。足跡は、かささぎ児童合唱クラブの扉に続く。
合唱団の白い制服を着た10歳の美咲(太田結乃)は、音楽げき『王妃アグリッピナの片思い』の脚本を書き上げ、ピアノ担当の典真(林新竜)に見せようと探すが、姿が見えない。隣のリハーサル室では翌日のコンクールに向けて合唱の稽古中。本番前後は慌ただしくなるのでいまのうちに集合写真を、と全員が並びシャッターが下りるその瞬間、リハーサル室のドアが開く。
12年後。仕事から帰宅したさくら(清原果耶)を玄関口で優花(杉咲花)と美咲(広瀬すず)が足止めする。「どうせサプライズでしょ」さくらは取り合わない。ふたりに促されバースデーケーキのローソクを吹き消す20歳になったさくら。美咲と優花のベッドにはさくらからの感謝の手紙が。サプライズを仕掛けたのはさくらのほうだった。
杉咲花と広瀬すずと清原果耶、家族でもなければ同級生でもないが、結束しなければならなかった年月を経ての現在の関係性を、人気も実力も充分な三人が本気で楽しんで演じているように見えるのに感動しました。いろいろと綻びはあるものの、安いファンタジーにはならなかったのは坂元裕二の筆の力か。一方、台詞回しでは坂元色は薄く感じます。
「人間がいままで幽霊だと思っていたものはまだ見つかっていない素粒子なんだという仮説」。大学の階段教室の量子力学の授業で、スーパーカミオカンデでニュートリノを観測する講義を聞く優花は、宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』の冒頭部分を連想させ、死生観にまつわる物語であることを示唆しています。