Stringsさんはグランドピアノがある地下のお店。9年ぶりに訪れました。ピアノの側面の曲線に沿ったテーブルが他にはないしつらえです。この日のサポートは、加藤エレナさん(key)と井上"JUJU"ヒロシさん(ssax, fl, per)の二人。夏曲「チョコレート」でスタートしました。
2曲目は4ビートの「シンキロウ」。ジャズの箱らしく、JUJUさんのソプラノサックスとエレナさんのピアノのアドリブの掛け合いがいつもより長め且つ熱めに盛り上げます。
2部構成のワンマンライブとあって、進行もゆったりです。普段のステージではあまり口数の多いほうではないChiminさんが歌詞の成り立ちや十代の頃のエピソードなどを話してくれて、部活のことや「茶の味」のバックグラウンド、どれも面白かったです。
ザ・フォーク・クルセダーズの「悲しくてやりきれない」は、矢野顕子さんがカバーしたものを最初に聴いて僕にとってはそれがスタンダードだったのですが、あの一歩一歩立ち止まるようなメロディを一音ずつ手渡すように歌うChiminさんのバージョンに上書きされました。
自身のオリジナル曲でも基本的に旋律の原型を崩すことがないChiminさんが、「住処」で一箇所だけフェイクを入れていたのはワンマンならではで、とても新鮮でした。
休憩を挟んで2部は新曲「光の方へ」で始まりました。3月のライブの感想で「Chiminさんは理由を歌わない」と書いたのですが、理由はきっと知っている。次の「夜」は特別に好きで何度も聴いている曲。歌い出しの息の柔らかさがいままでで一番でした。19歳のデビュー盤『ゆるゆるり』収録の「午後」も聴けて、アンコールの「すべて」ではまさかのクラップ。
好きな歌声がたっぷり聴けるワンマンライブがやっぱり好きだなと思いました。Chiminさんのあたたかく澄んだ美声の向こう側になぜかいつも荒涼とした地平を感じてしまいます。その理由を僕なりにいつか解き明かしてみたいと思っています。