こども食堂併設のカフェMINAMIを営む風間心也(ディーン・フジオカ)のもとに旧知の客が訪ねてくる。「彼女がいなくなってからもう30年、生きているのかどうかもわからない」。そのとき無免許運転の車がカフェの正面に突っ込み、カフェも車も大破する。
舞台は30年前に遡り、MINAMIと同じ場所で心也の父(安田謙)が経営するかざま食堂では、こども食堂という名称がまだない時代に、様々な事情を抱える子どもたちに無料で食事を提供していた。カウンターでバター醤油焼きうどんを食べる姉弟。姉の夕花(當真あみ)は高校1年生。心也(長尾謙杜)幼馴染で高校の同級生だった。
當真あみさん(左利き)は沖縄出身の18歳。『水は海に向かって流れる』のマイペースな高校生役で存在を認識し、『最高の教師』『さよならマエストロ』で芦田愛菜さんとドラマ共演が続き、NHKの『ケの日のケケケ』で初の主役を演じました。カルピスウォーターのCMのさわやかさと少々影のある役もしっかりこなすお芝居の幅を持っています。
本作は、雨に打たれる帰り道、海辺の逆光、主人公の疾走など、アイドル映画の基本的な要素を押さえており、主人公ふたりのクローズアップも多いので、當真さんの小動物のようなつぶらな瞳と長すぎるまつ毛の破壊力を堪能できます。長尾謙杜くんはなにわ男子で踊っているときのほうがきらきらして見えました。尾野真千子さんの圧倒的な技術、芋生悠さんもよかったです。
「できない約束をして、結局誰かを傷つけてしまうのなら(約束しない)」という心也の台詞があります。できるかできないかわからないならまず約束して、できるように最大限努力し、それでもできなかったら謝ればいいんじゃないか、と僕は考えます。
夕花と心也が創立する「ひま部」は『ケの日のケケケ』の「ケケケ同好会」とコンセプトが重複しているので、同じ主演俳優の作品としては何かもうひとつ特徴を出してもよかったのではないでしょうか。
タイトルに反して、画面に映る食事の種類は多くないですが、バター醤油焼きうどんは必ず食べてみたくなる映画です。