2025年10月10日金曜日

秒速5センチメートル

ユナイテッドシネマ豊洲奥山由之監督作品『秒速5センチメートル』を観ました。

「人が一生に出会う言葉は約5万語以上、その中からひとつを選ぶとしたら?」。主人公遠野貴樹(松村北斗)が館長(吉岡秀隆)を訪ねた科学館の展示室で宇宙探査船ボイジャーに搭載されたゴールデンレコードのレプリカがプレーヤー上で回転し、世界中の原語で録音された「こんにちは、お元気ですか?」を再生している。

「どこにいてもいつもあの頃の気配を探している」。IT企業のオフィス、イヤホンで外界を遮断し、同僚の誘いをスルーして、プログラムコードを入力する遠野。同じフロアに勤務する水野理紗(木竜麻生)も周囲とコミュニケーションを取ろうとしない。

小田急沿線の区立小学校に転校してきた篠原明里(白山乃愛)は、隣席の貴樹(上田悠斗)に上履きが買える店を教えてもらう。1年前に転校生だった貴樹は明里と一緒に過ごす時間が増える。図書館で貴樹は漱石を明里は『子供の科学』を手に取り交換する。そこには2009年3月26日に地球に衝突する可能性のある小惑星1991EVの記事が掲載されていた。

鹿児島県種子島の高校に通う澄田花苗(森七菜)は、同じくスーパーカブで通学する弓道部の遠野(青木柚)に恋をしている。恋愛感情はなさそうな遠野だが、RADIOHEADの "Pablo Honey" を貸してくれて、澄田が誘えば一緒に下校し、ふたりでカラオケにも行く。遠野は煙草を所持していることを花苗の姉で部活の顧問みどり(宮﨑あおい)に咎められる。

新海誠監督の2007年のアニメ作品では3つの時代を切り取った短編オムニバス作品の各時間軸を交錯させて再構成されています。松村北斗は『すずめの戸締り』、森七菜は『天気の子』でメインキャストの声を担当しており、木竜麻生は現在NHK夜ドラ『いつか、無重力の宙で』で超小型人工衛星の開発をしています。

種子島の広大な空の描写は新海アニメへのオマージュか、大変美しく撮られています。大人になった明里(高畑充希)は実は近くにいるのに、すれ違い続ける遠野の鬱屈を受容する館長の声の優しさ、主人公の各年代と関わりを持つみどり先生、主人公たちを見守る大人たちに共感している自分がいました。

Bill Evansの研究家としても知られる、WONK江﨑文武の劇伴が控えめながら要所を締めて、作品に格調をもたらしています。幼少期の明里を演じた白山乃愛さんは『Dr.チョコレート』の10歳の天才外科医でブレイクした子役ですが、思春期のお芝居ができる13歳になって、先が楽しみな若手がひとり増えました。

 

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