2024年10月6日日曜日

ドキュメンタリー オブ ベイビーわるきゅーれ

曇天。109シネマズ木場高橋明大監督作品『ドキュメンタリー オブ ベイビーわるきゅーれ』を観ました。先月公開の『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』の制作過程を記録した劇場版映画です。

アイコンに使うスチール撮影後、フラペチーノを片手に歩く杉本ちさと役の高石あかり(左利き)と深川まひろ役の伊澤彩織

前作『ある用務員』の編集時に阪元裕吾監督のPCが故障し、エグゼクティブプロデューサー鈴木祐介氏のオフィスで編集作業を行っていた。鈴木氏がたまたま画面を覗いたときに映っていた二人の少女殺し屋のやりとりが面白く、坂元監督にスピンオフを勧めて本シリーズが誕生した。

「アクションとアクションの間にリアリティが生まれる」。本作においてはドラマシーンよりアクションシーンの撮影の裏側にウエイトを置いており、坂元監督よりアクション監督園村健介氏の尺が長い。映画の後半は『ナイスデイズ』のクライマックス、伊澤彩織と敵役冬村かえでを演じる池松壮亮の素手の戦闘シーンの撮影。数秒のカットを何度も検証しながら撮り直し詰み上げていく過酷な現場をリアルに映し出します。身体の位置、関節の角度、銃やナイフの構え方をミリ単位で試行錯誤する、死闘はデュオダンスでアクション監督はコレオグラファーだとの思いを強くしました。

「かえではちさとと出会っていない世界線のまひろ」だと坂元監督は伊澤彩織に伝えたという。上記のクライマックスシーンはその意味でも自身との闘いなのだと思います。極限まで体力を消耗して食欲が湧かないが、座り込んだ地面に置いたロケ弁の白米を次のシーンのために無理やり口に押し込む伊澤彩織の姿に胸が詰まります。

池松壮亮のプロフェッショナリズムと優しさが滲む。初登場シーンの撮影直前にロケ地の森の泥濘を自ら手に取り、はだけた胸と腕と顔に塗りつける。ネット動画をひたすら観て真似ることで、組織に属さず誰にも教わらず殺しの腕を上げたかえでの役作りをした。クランクアップ後しはらく経ったインタビューでは「敵役とはいえ女性の腹を蹴るのは生理的に抵抗があった」と言い、苛烈を極めたクライマックスの撮影には自身も満身創痍でアイシングしながら臨み、カットがかかるごとに敵役でありダンスパートナーである伊澤彩織のコンディションを気遣う。

主要キャストの怪我や体調不良で宮崎ロケのスケジュールが狂う。スタッフが集まって臨時会議が開かれ、日程や予算の対策を議論するシーンの赤裸々さは身につまされます。

もうひとりの主人公ちさとを演じる高石あかりさんがカメラの外でも終始笑顔で、太陽のように周囲を照らしているのも印象的でした。

 

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