2024年7月12日金曜日

言えない秘密

雨天。ユナイテッドシネマ豊洲河合勇人監督作品『言えない秘密』を観ました。

「誰?」「いまピアノ弾いていたでしょう? 邪魔したならごめん」「もう弾き終わったから大丈夫」。イギリスへの音楽留学で挫折し青葉音楽大学ピアノ科3年に編入した樋口湊人(京本大我)は、取り壊しが決まった旧校舎の3階のレッスン室から聞こえる音色に惹かれ階段を駆け上がる。内藤雪乃(古川琴音)の演奏だった。

数日後ふたりは楽典の教室で再会する。授業が終わるや否や逃げるように教室を出る雪乃。猛然と追いついた湊人は先日の楽曲名を尋ねるが、雪乃は湊人の耳元で「秘密」と囁く。湊人の行動を訝しむ音大の同級生で幼馴染のひかり(横田真悠)。3人を軸に物語は進みます。

台湾映画『不能説的秘密』、悪役の登場しないファンタジックなラブストーリーをリメイクした本作のオファーに驚いたと新聞のインタビューで古川琴音さんが答えていました。映画でもTVドラマでもやや癖のある作品への出演が多いのですが、受けたからにはしっかり期待以上のアウトプットができる実力があり、日本語的には「?」と思うようなタイトルから始まって、湊人の父親(尾美としのり)の不穏な笑顔、ピアノ科教授(皆川猿時)のハイテンション、ピアノバトルのルールやクリスマスパーティの選曲、学内ショパンコンサートの楽器編成など、ちぐはぐなところはありますが、結果的には古川琴音さんのかわいい表情と声としぐさを大画面で愛でるための映画として成立しています。連弾シーンはハートウォーミングなのにエロティックだし、全衣装かわいいです。

楽器を奏でるという行為の根底には、奏者自身の感情の乗り物である身体の拡張欲求があるように感じます。より大きく、より遠く、よりエモーショナルに。特にピアノは音域もダイナミックレンジも広く、生身の人間が出せる音の領域を遥かに超えている。ストリートピアノの奏者がよく「感情表現ができる」と言うのはそういうことなのかもしれないと、この映画を観て思いました。

 

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