20XX年の上海。新米記者のジュノー(太田駿静)はアイドルの取材に遅れそうになり、路線バスの窓から人魚専用の空中水路に飛び乗る。水圧に押し流され吐き出された埠頭で荷物の積み下ろしをする男が、ジュノーが子どもの頃から愛読している『人間と人魚の交流史』で紹介されたステファン(鈴鹿央士)であることに気づく。
超凡船舶有限公司の設計部門に勤務していたステファンはスクリューに魚を巻き込まないエアージェットを製品化することが夢だが、シー社長(山里亮太)の不興を買い、甲板清掃業務に左遷されてしまう。人間世界との友好交渉が決裂して、海に戻る人魚族ネプトゥーヌス国王(三宅健太)の立てた大波に飲み込まれたステファンは気づくと病院にいて、ネプトゥーヌスの王女チャオ(山田杏奈)の求婚を受けることになる。
「心底地上の人間に心を許したら、水中でなくても人の姿になれるんだよ」。ステファンとチャオの結婚が現在の人魚と人間が共存する世界のはじまりだった。アンデルセン童話の『人魚姫』の翻案は、『魔法のマコちゃん』『リトル・マーメイド』『スプラッシュ』『崖の上のポニョ』と枚挙にいとまないですが、オリジナルストーリーの本作では人魚姫が陸上でもほぼ魚の形態をとっていることと、それによって人の姿と引き換えに声を失うという設定が不要のため、会話ができる(人の姿になっても)という点が特徴的だと思います。
声優としての大きな役は初めてだと思いますが、山田杏奈さんが、良く言えば純真無垢、悪く言えば常識知らずなプリンセスを魅力的に演じており、異形の姫がかわいらしく思えてきます。実写でも『リラの花咲くけものみち』の獣医志望の純朴な農大生から『早乙女カナコの場合は』の小悪魔的なギャルまで役の幅が広いのに加え、声の演技での活躍も今後期待できるのではないでしょうか。劇中歌も素敵でした。
STUDIO 4℃制作の劇場版映画を観るのは『海獣の子供』以来、『ハーモニー』の淡彩の狂気よりも、猥雑な街並みの緻密な描写は『鉄コン筋クリート』に近い。後半のロボットの暴走やカーチェイスの躍動感、挑戦的な画角とカメラアクションの独創性は流石。エンドロールも必見です。
3D音響も素晴らしいので、映画館で観てこその作品だと思います。
3D音響も素晴らしいので、映画館で観てこその作品だと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿